抄録
多方向大量同時計測が可能な計測システムによって計測された対象物を3Dプリンタで出力する場合,積層方向が重要である.なぜならば,積層される方向によっては,出力したモデルで,稜線形状がもとのデータの通りに再現されないことがあるからである.各ポリゴンの面積や方向に基づいて形状の再現性を評価する従来手法もあるが,稜線形状ではなく全体の形状を再現するため,稜線形状が失われる可能性がある.本研究は,遺跡から出土した遺物,特に打製石器の剥片を対象に,積層造形法によって生成される積層モデルが,元々のモデルデータの稜線形状を維持する最適な空間姿勢かどうかを評価する方法を提案する.対象モデルは,多方向大量同時計測システムによって計測された点群から生成したポリゴンモデルとする.本手法は,ポリゴンモデルから石器剥離面の境界稜線を抽出し,抽出された稜線の形状と,積層造形により生成される稜線の形状を比較することで,両者を評価するものである.いくつかのモデルに対して本手法を適用し,本手法の有効性が確認できたので報告する.