抄録
石器や土器などの遺物の3次元計測によって得られた点群データに基づき,考古学的な調査や分析が行われている.遺物は考古学上貴重なものであり,移動にリスクを伴うものが存在する.また,一つの遺跡から大量に出土する遺物を計測のために移動させることは,運搬に関わる梱包などの作業の負担が大きい.そこで,出土した遺物を現地で計測し,計測データをネットワークを介した通信により転送できると,効率的にデータ処理を行うことが可能である.しかし,3次元点群データは物体の細かい形状変化の表現に優れる一方,高精度計測を行った場合などに構成要素である点の数が増加し,データ量が大きくなりやすく,データ転送に時間がかかるという問題点がある.データ転送を効率よく行うためには,データの圧縮手法が有効である.そこで,本論文では,石器剥離面をB-spline曲面で近似して,剥離面を表す点群よりも少ない制御点数のトリム曲面を生成することで,データを圧縮する手法を提案する.また,トリム曲面から計測点群を再生成する手法もあわせて提案する. 本手法を実装し,計測間隔0.1mmで計測した石器計測点群に適用し,有効性を確認した.