2024 年 23 巻 2 号 p. 2_1-2_13
熱溶解積層方式3Dプリンタを用いて造形可能な形状のひとつとして,空中に橋渡しされた細い構造「ブリッジ」があり,毛の造形やサポート構造の造形などに応用されている.本研究では,ブリッジの造形を発展させて芸術表現に活用することを目指し,橋渡しされた1本のブリッジの太さに注目した.これまでのブリッジは始点から終点まで一様な太さで造形されていたが,樹脂押出量と造形速度の制御を駆使することで,ブリッジの太さを直径0.5–0.2mm 程度の範囲で,橋渡しされた途中の部位であっても変化させられることがわかった.この太さを変化させたブリッジを1.0mm 程度の間隔で密集させれば,ハッチングのような濃淡表現が可能となる.また,造形方向を変化させながら複数層のブリッジを造形することで,モアレも発生させることができる.本論文では,ブリッジの太さ制御の実現可能性を検証するとともに,太さの制御に寄与するパラメータの探索を行い,材料や3Dプリンタが変化した際のキャリブレーションと造形の安定化について述べる.これらの知見をもとに実装したシステムを用いて造形例を制作し,本手法の課題や今後の展望について議論する.