抄録
考古学の分野では,遺物の表面模様を分かりやすく観察できる手法が求められており,これまでに土器全体を展開する手法などが提案されている.しかし,これらの手法は縄文土器のように,製作過程で自然に発生する凹凸が大量に含まれるものに適用すると,表面模様ではない表面の凹凸が強調され,展開された模様のどこが表面模様なのかを,正確に把握することが難しい場合がある.そこで,本研究では縄文土器の表面点群から,表面模様をセグメンテーションする手法を提案する.まず,土器全体を示す点群を二次曲面にフィッティングし,その主軸を基に複数の断面で土器全体をスライスし,分析の基盤とする.次に,スライスした各断面に存在する点群を,外れ値除去を伴う楕円当てはめ手法によりフィッティングし,表面の凹凸に影響されない楕円を求める.さらに,楕円と点群の距離を評価することで表面模様を表す点か否かを判断する.しかし,製造精度の問題から,必ずしも断面が楕円で近似できるとは限らず,表面模様を正しく判断できない場合がある.そこで,断面上の点群に対し,楕円との距離について凹凸分析を行い,凸部のみを残すことで,表面模様を精度よく抽出する.ただし,縄文土器は,製造品質の低さから点が滑らかに変化をしないため,楕円と点の距離から定義されるグラフをガウスカーネルで平滑化し,ノイズと思われる局所的な凹凸を除去した後に,極値分析を行い,表面模様の認識精度を向上する.