抄録
アメフクラガエルBreviceps adspersus はアフリカ南部に生息する地中性のカエルで,短い四肢と丸い体型を特徴とする.ペットまたは展示動物として飼育される例があるものの,基礎生態に関する知見が乏しく,国内では長期飼育,飼育下繫殖ともに報告はない.本研究では,アメフクラガエルの生息環境と生態の野外観察結果をもとに,温度,湿度,土壌および給餌量等の飼育条件を検討し,生息域外における飼育下繁殖に成功した.5年間の試行から,黒土と海砂を配合することで営巣に適した土壌を再現できることと,日本の春から夏にかけての温度・湿度・気圧の変化が繁殖を促せ
ることが示唆された.また繁殖した個体の観察から,飼育下において孵化から変態の完了まではおよそ16日を要し,早ければ1年で性成熟すること,同一個体が2年連続して繁殖できることが明らかになった.一方,子ガエルの飼育においては初期の死亡率が高く,衛生管理の徹底と十分な給餌によって生存率が向上するものの,改善の余地が残された.