人類學雜誌
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奄美大島群島貝塚出土の猪と犬について
林田 重幸
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1960 年 68 巻 2 号 p. 96-115

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抄録

奄美大島本島笠利村宇宿貝塚、徳之島面繩貝塚の獸骨を調査したところ、出土した獸骨の殆んどが猪骨で鹿骨は全く見られない。尚宇宿貝塚から犬の尺骨一片が出た。
奄美貝塚出土の猪は南九州諸遺跡の猪に比すれば小形であって、現棲の奄美の猪と同大と考えられる。南九州遺跡に出る大形のものは見られない。
奄美において、地質時代の化石として鹿は多數見られるが猪は發見されていない。貝塚形成期に入ると猪の遺物のみで鹿は全く見られない。地質時代に猪が存在しなかったとすれば、貝塚に突然出現する猪は、貝塚人によって飼養された猪、または原始的豚として何れの地からか導入されたものであろう。南九州遺跡に見られる大形の猪がいないから南支沿岸またはそれ以南から運ばれたものまたはその後商と考えられる。而して現棲の猪はこれらの子孫であろう。
犬は肩高33cm 前後の小形犬であって、既に報告されている面繩貝塚、崎樋川貝塚の犬と同様に日本石器時代の小形犬に屬する。
この犬は長谷部の説のように中南支以南と關係をもつであろう。

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