人類學雜誌
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沖縄における血液の遺伝形質の分布について
II.石垣島における数種の赤血球酵素型の分布
尾本 恵市石本 剛一原田 勝二三沢 章吾
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1975 年 83 巻 3 号 p. 253-260

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抄録

前2報(本誌82巻2号)にひきつづき多型性血液マーカーの分布を調査する目的で石垣島の血液試料約780個につき,赤血球酵素5種(AcP,PGM,6-PGD,ADA,G-6PD)を電気泳動法にて検査した。
酸性ホスファターゼPa遺伝子の頻度(0.270)およびホスホグルコムターゼPGMIの"稀な"変異遺伝子の頻度は共に本州における値より有意に高く,またPGM11の頻度は本州よりやや低い。稀な表現型としては酸性ホスファターゼでは807例中BC'型1例, PGM1では815例中7-1型12例,7-2型3例,3Okinana-1型5例,3Okinana-2型1例である。稀な変異型も含め,今回のデータは沖縄本島からのデータに似ている。なおG-6PDでは760例中1例(沖縄本島出身の女性)にヘテロ接合と推定される表現型が発見された。
被検者の両親の出身地にもとずき,試料を八重山,宮古,沖縄の3地域群に分割してそれぞれの遺伝子頻度を比較したところ,八重山と宮古の群間で差異の存在する可能性が示唆された。

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