1978 年 86 巻 4 号 p. 321-336
筆者は,縄文時代から江戸時代に至る日本人の脊柱188例について,古病理学的研究をおこなった。
変形性脊椎症,腰仙移行椎,潜在性脊椎披裂症,シユモール軟骨結節については,時代別,年令別,性別及び椎柱の部位別の出現頻度などを観察し,疫学的な解釈を試みた。
さらに結核性脊椎炎(脊椎カリエス),強直性脊椎関節炎,骨折,奇形などの興味ある病理学的変化を認め,これらについて記載を行なった。とくに結核性脊椎炎の発見例については,これまでに知られていた例と同様古墳時代のものであり,本症が弥生から古墳時代にかけて大陸文化の移入にともなって,本邦にもたらされたものと推論した。
強直性脊椎関節炎の例は江戸時代のもので,日本における最初の古病理学的発見例である。