人類學雜誌
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琉球人と南九州人の生体観察
アイヌおよび韓国人との比較
安部 国雄
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1979 年 87 巻 4 号 p. 393-422

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抄録

1972年から1977年に10回にわたって琉球12地域,南九州4地域の住民を調査して1795名(男920,女875)の形質人類学的資料を得た。その資料から主な観察項目を南の波照間から北の椎葉に至るまで,ほゞ地理的配列に従って整理して表(図)示すると共に,著者らによって得られた韓国人やアイヌの結果と比較して,琉球人の観察的形質の特徴の把握に便ならしめた。またこれら地域住民の先人の業績をまとめて参考に供した。なお計測項目については他にまとめて(安部ら,1979)発表した。
本篇で特記すべきは琉球人の上眼瞼のヒダの性状である。即ちこのヒダが内眼角に附着しないもの(ヒダの認められないものも含めるがその頻度は稀)が,他地域の日本人のそれよりも,琉球人においてはかなり高い頻度で認められ,しかもこの頻度は北から南にゆくに従って次第に高くなってゆく(cline)。
琉球人のこのヒダの特徴は,台湾の原住民に連続し(未発表),そしてそのルーツは南東アジアの原住民の「マレー目」に帰着するものと推測している。

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