脳下垂体の腫瘍にもとつく巨人症の形質を,力士•出羽ケ嶽の骨格について,人類学的に研究した。脳頭蓋の外形は巨大であるが,実は,骨の病的肥厚による矢状径と横径の著しい増大にもとつくもので,脳容積に異常はない。顔面は高径•幅径とも過成長をとげ,とくに前者が甚だしく,上顔より下顔部に進むほど加速される。さらに上•下顎骨の不平等な成長による咬合の左右差は,咀蠕筋の不相称を招き,結局,全頭蓋の左右不相称を生じた。四肢は身長に比しても長く,逆に体幹は太く短かったらしい。上肢骨は相対的にも極めて頑丈であるが,下肢骨はあまり頑丈ではない。上肢骨の大きさには特有の相補的な左右差あるいは不均衡が見られる。