人類學雜誌
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西アフリカ諸民族の身体技法にっいての覚え書き
川田 順造
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1991 年 99 巻 3 号 p. 377-391

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抄録

身体の使い方は,生物的要因に規定されると同時に,生態学的•文化的に条件づけられており,ある社会の成員に共通し,他の社会の成員とは異なるものも多い.身体技法のかなりのものは,特に労働が機械化されていない技術的状況では,作業の効率を高める役割を果たしてきた.筆者は,多年熱帯西アフリカで文化人類学の調査を行ううち,この地域の黒人諸民族に,次のような身体技法が共通して認められることに気付いた.(1)立位で,膝を伸ばしあるいは軽く曲げたまま,上体を深く前屈(というより腰の部分から前倒)させた姿勢での作業,(2)背中をもたせかけない投げ足(足はそろえて前へのばす,交差させる,または八の字形に開く)姿勢での,長く持続する軽作業や休息,(3)子供からかなりの年配の成人にいたる広範囲の男女によって,極めて多様な物体について行われる頭上運搬,(4)腕の酷使と対照的な,歩行以外の足の多少とも技巧的な使用の稀少.これらの身体技法には,生態学的•文化的条件から理解できる面もあるが,西アフリカ黒人の身体の形態上•機能上の特徴がどのように関与しているか,自然人類学と文化人類学の共同研究によって解明されるべき問題であろう.

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