Anthropological Science
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人類の染色体進化研究の現状
平井 百樹
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1996 年 104 巻 5 号 p. 355-364

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抄録

ヒトの染色体進化は, かつてはバンド•パターンを指標とした近縁霊長類との比較により研究されてきた。しかし最近では, 遺伝子工学的手法によるDNAレベルでの染色体比較研究が主流となっている。クローン化された遺伝子やDNAフラグメントを染色体上に位置付けする遺伝子地図作成 (マッピング) により, 霊長類種間の相同遺伝子の位置を比較し染色体の構成が調べられている。特にヒト染色体特異的DNAライブラリーを標識プローブとし他の種の染色体にハイブリダイズさせ, 相同領域を顕微鏡下で検出する染色体比較彩色法は, 染色体進化を調べる上で極めて有力な方法である。最近の研究では, 染色体は大きな保存的染色体領域が単位となってダイナミックに再構成され進化していることがわかってきた。このような研究により, ヒトの染色体の進化の全貌が明らかにされることが期待される。

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