アジア動向年報
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主要トピックス
ロシアのアジア政策 北朝鮮核問題で中国と協調
日臺 健雄
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2018 年 2018 巻 p. 25-42

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抄録

内政面では,プーチン大統領の支持率は70~80%台と高止まりしており,2018年3月の大統領選挙で再選された。一方,メドベージェフ首相はインターネット上の動画で不正蓄財疑惑が告発され,退任を求める世論が強まり,政治的基盤に揺らぎが生じた。なお地方の首長が2人,汚職で逮捕されている。この2人を含め,2017年を通じて20人近い知事・首長が解任されて若手が登用されるなど,地方高官の積極的な交代がみられた。若年層による反政府集会は大都市部を中心に活発に行われ,政権は拘束などの弾圧を加えた。2018年3月の大統領選挙を前にプーチン政権は「安定」の重要性を強調する一方,「変革」につながる動きを警戒し,ロシア革命100周年に際してプーチン大統領は公式行事を行わなかった。

経済面では,2017年の実質GDP成長率は前年比1.5%増となり,2014年以来3年ぶりのプラス成長となった。プラス成長をけん引した主な要因として,原油価格が緩やかに上昇したことで石油・天然ガス関連企業の業績が好転したことなどが指摘される。一方,中銀の政策が功を奏して消費者物価上昇率は前年比2.5%となり,2016年の同5.4%を下回ってソ連解体以来もっとも低い水準を記録し,政策金利の引き下げが6回にわたって行われた。

日本との関係では,プーチン大統領の訪日があった2016年に引き続き,2017年も日ロ間の要人の往来は活発であった。中国との関係では,北朝鮮の核問題をめぐり対話路線で一致し両国で行程表を作成したほか,政治,経済,軍事の各面で関係強化がみられる。北朝鮮との関係では,国会議員団が複数回にわたり訪朝し,ウラジオストクに万景峰号の寄港を一時認めるなど,国連による経済制裁の下でも一定の関係を保っている。その他アジア諸国との関係では,東南アジア諸国にロシア太平洋艦隊の艦船が複数回にわたり航海を行い,アメリカの同盟国フィリピンとは兵器の供与を含めた関係強化がみられるなど,トランプ政権が自国最優先主義をとるなかで,アジアでの影響力強化をねらう動きをみせている。

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© 2018 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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