アジア動向年報
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各国・地域の動向
2018年のネパール 議席の3分の2に迫る第2次オリ政権の発足
佐野 麻由子
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2019 年 2019 巻 p. 517-540

詳細

2018年のネパール

概 況

2018年のネパール国内政治は,2月の国民議会選挙の実施,オリ首相の選出,5月のネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派(CPN-UML)とネパール共産党毛沢東主義センター(CPN-MC)との統合によるネパール共産党(NCP)の誕生などにより議席のおよそ3分の2を占める安定政権の礎が築かれた。

冷え込んでいたインドとの外交については,4月のオリ首相の訪印,5月のモディ印首相の来訪によって改善がみられ,インドの港とネパールを結ぶ水路の整備,鉄道の敷設,水力発電の整備といった大型のインフラ整備支援に進展がみられた。「一帯一路」構想を推進する中国からも,多くのインフラ整備支援を取り付けた。今後,ネパール,インド,中国の3カ国協力の行方に期待がかかる。

経済状況については,地震の復興に加え,2016/17年度に生じた大規模洪水の被害で経済成長の停滞が懸念されていたが,予想に反し好調な経済成長が見込まれている。

国内政治

政治の安定に向けて:国民議会選挙の実施,新首相の任命,統一共産党の誕生

2017年末の連邦議会の下院にあたる代表議会選挙はCPN-UMLとCPN-MCの左派連合の勝利で幕を閉じた。国内政治において大きな動きがあったのは,2月に入ってからであった。

2月7日に連邦議会の上院にあたる国民議会選挙が行われ,左派連合が代表議会(下院)と国民議会(上院)でそれぞれ議席の3分の2近くを占める安定政権が誕生した。国民議会はネパール憲法86 条2A項 により7州の州議会議員および自治体首長が選出する各州8人の計56人(表1)と86条 2B項により政府が推薦し大統領が承認する3人の59人で構成される。なお7州の州議会議員および自治体首長が選出する56人については,少なくとも女性3人,ダリット1人,障がいを持つ人あるいはその他の少数者から1人を選出すること,特に政府が推薦する3名については少なくとも女性1人を含めることを規定している。選挙の結果,59議席のうち,41議席を左派連合が占めることとなった。

表1  国民議会(上院)選挙の結果

(注) SSF-N:連邦社会主義フォーラム・ネパール,RJP-N:国家国民党ネパール,CPN-UML:ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派,CPN-MC:ネパール共産党毛沢東主義センター,NC:ネパール国民会議派。

(出所)The Himalayan(https://thehimalayantimes.com/nepal/president-bidhya-devi-bhandari-okays-new-governments-national-assembly-nominee)および,選挙管理委員会(http://election.gov.np/ecn/uploads/userfiles/rashtriyasabharesult.pdf)より筆者作成。

2月14日には,CPN-UMLのオリ議長が第41代首相に選出され,翌15日に就任し,第2次オリ政権が発足した。3月13日にはバンダリ大統領が再選を果たし,連邦民主国家への一歩を踏み出した。第2次オリ内閣は,憲法76条9項に従い,25人で構成される。大臣は,首相就任時に2人が,2月26日に4人が,3月16日に15人が,6月1日に2人が,8月3日に3人(うち1人は7月24日に失言への批判を受け辞任したタマン法務・司法・国会大臣の後任人事)が任命された。

連邦議会議席のおよそ3分の2を占める安定的な政権を樹立させたCPN-UMLと CPN -MCではあったが,NCPとして党の統合を果たしたのは,左派連合が誕生して7カ月が経過した5月17日になってからであった。2月19日にオリCPN-UML議長とダハールCPN-MC議長が統合に向けた7項目の合意に署名して以降も,2度にわたって統合が延期された。2回目の期日は,ウラジミール・レーニンの誕生日であり1949年に旧ネパール共産党が誕生した4月22日であった。7項目の合意事項とは,政党の名称,拠ってたつイデオロギー,首相や要職の割り当てに関わるものである。

『アンナプルナ・エクスプレス』の編者ビスワス・バラル氏は,ダハール議長はじめCPN-MC幹部が党の中央委員会での役職,議会での役職の保証についてオリ議長に疑念を抱いていること,10年に及んだマオイストによる反政府活動中の犯罪追及をめぐる意見の相違が統合を遅らせたとしている。年内に両党の下部委員会の統合は進まず,次年に持ち越されることになった。12月15日にオリNCP共同議長とダハールNCP共同議長は党の組織的な統合プロセス,政府のパフォーマンスの評価と党の果たす役割,政党の将来構想の3点について記した共同文書を提出し下部委員会の統合を前進させようとした。しかし,17日の常任委員会で賛同は得られなかった。28日に開催された常任委員会では,共同文書改訂の延期が決まり,2019年1月半ばまでに統合をはかることが目標に掲げられ,特別作業班が形成された。

連邦民主制下での地方政治の動きとしては,2月22日に84の地方自治体が名称と市区町村の役場の所在地の変更を行ったことが挙げられる。地方自治体の名称および役場の所在地については,前年の統一選挙に先駆けて地方自治体再編委員会(LLRC)が753の地方自治体の境界,名称,役場の所在地を設定したが,そのうちのおよそ11%が選挙後に地方政府統治法4条3項「地方レベル協議会で3分の2以上の賛成」によって名称,役場の所在地の変更を行ったことになる。憲法の別表8によると,地方自治体は,警察の保持,FMラジオの運営,地方税(土地と建物の登録料,自動車税,手数料,観光旅行料金,広告税,事業税,土地収入関税,およびその他を含む)徴税など22の権限が与えられている。LLRCは,753という地方自治体数は過剰で,統廃合により300程度になることが統治や財政面で望ましいとしている。今後の自治体運営の進展に関心が集まる。

新刑法の制定と報道の自由,プライバシー保護

8月17日に新しい刑法,民法が施行された。これにより,プライバシーの侵害や医療過誤が刑罰の対象となるほか,終身刑の延長(20年から25年に),透明性の高い刑務所運営,受刑者の地域奉仕活動の実施が定められたほか,路上での物乞いの禁止,女子の結婚年齢引き上げ(18歳から20歳に),路上での動物の放し飼いや祭祀を除いた公然の場での動物屠殺の禁止が定められた。新刑法施行に関連して,報道の自由をめぐりメディア団体から相次いで懸念が表明された。8月21日に国際ジャーナリスト連盟は,プライバシーと中傷に関わる新刑法の293節から308節のいくつかの条項が,「報道者の自己検閲」を促し報道の自由・メディアの独立性を制限するとし,即時改正を求めた。具体的には,これらの条項はプライバシーの侵害などを理由に政治家への批判を犯罪化すること,個人情報保護を名目に公人についての報道を規制することを可能にし,公人に対する写真撮影や録音・録画を許可なく行うことを禁止する,そして,容疑者を40日間拘留することを許可する,違反者には最高3年の禁錮と罰金260ドルが科せられるなどである。メディア規制に対する抗議に応じて,政府は改正を検討するメディア関係者を含めた委員会を組織した。

9月15日に,代表議会(下院)でプライバシーに関する個人の権利保護法案の修正が審議され,9月19日に大統領によって承認された。これにより,個人のプライバシーの根本的な価値を侵害しないかぎりにおいて,公人の財産の詳細,学歴証明書,パスポート,運転免許証ほかの個人情報を明らかにすることの制限はなくなり,公共の福祉のための報道の透明性は担保されることになった。

しかし,メディアへの規制の懸念が完全に払拭されたわけではない。11月27日に政府は2008年の電子取引法に替わる法案を立案しており,メディアへの締めつけが危惧されているからだ。2008年の電子取引法によって,議員による不正な土地売買をネットニュースで報じたジャーナリストが9月4日に報道評議会(政府が設置した報道の自由を担保するための独立的,自律的な機関)への通告なしに逮捕され,4日後に釈放される事件が起きた。同件についてタパ内務大臣は,逮捕の手続きに誤りがあったとし,経緯を調べるよう警察に命じている。11月11日には政府が閣僚会議での大使人事についての決定事項をメディアに公表することを拒み,人々の知る権利を制限するものであるとし批判が出た。政府のメディア規制をめぐり今後も両者の対立が続きそうである。

個人の監視につながるような動きへの懸念もある。5月15日にFacebook社が公表した透明性報告書によって,2017年に政府の複数機関がFacebook社に対し110のアカウントの詳細の提供を求めていたことがわかった。12月1日の『カトマンズポスト』紙の社説では,カトマンズ盆地だけで474台が,ネパール全体で2772台の監視カメラが設置されたと報じている。カメラの設置によって11月16日にネパールガンジで爆弾を仕掛けた犯人が逮捕されたほか,4571人の交通規則違反者が首都交通巡査部門(MTPD)によって罰金が徴収されるなど,犯罪の抑止効果を評価できる一方で,NGO「自由フォーラム」のタラナト・ダハール氏やネパール国民会議派(NC)のガガン・タパ議員からは,警察による映像の悪用を懸念する声もあがっている。

マデシとの関係

オリ首相は,マデシ人口の多い第2州とのつながりを強化するために6月1日にマデシ系の連邦社会主義フォーラム・ネパール(SSF-N[ネパール語表記]/FSF-N[英語表記])から2人の閣僚会議大臣を,8月3日に1人の国務大臣を任命した。SSF-Nは,オリ首相就任後,マデシの政治的課題解決のために政府の主要ポストの割り当てを求めていた。

マデシとは,インド国境沿いのタライ地域に居住するインド系ネパール人を指す。2016年1月23日の第1次憲法改正後,マデシ系政党は,(1)国家的要職への就任にかかわる市民権上の要件の修正,(2)タライ地域にある第2州および第5州の区画変更,(3)選挙区割りを地理的要因ではなく人口に基づいて行うこと,(4)国民議会(上院)の議席配分を人口数のみに比例させること,(5)州公用語規定の明文化,などのさらなる改正を求めていた。マデシが憲法への抗議を込めて「暗黒の日」と位置付ける9月19日の憲法記念日にSSF-Nが抗議活動を組織するのかが注目を集めたが,前日に組織しないことが公表された。憲法記念日には,C.K.ラウト氏をリーダーとする独立マデシ同盟の支持者20人が逮捕されたが,大きな混乱は生じなかった。

しかし,10月7日にマデシ系の国家国民党ネパール(RJP-N)が,政府への支持とひきかえに,憲法の改正に加えて(1)2015年中にマデシによる抗議活動で逮捕された幹部の釈放,(2)2015年8月24日のネパール治安部隊への襲撃事件に関与したとして司法の監察下におかれているレシャム・ラル・チョウダリ議員の議員宣誓の許可,を要求した。これに対し,オリ首相は10月16日に憲法改正を約束した。しかしその後,憲法改正の進展はみられず,12月25日にRJP-Nのリーダーが首相官邸を訪問,憲法改正の議論が行われないことへの不満を表明し,1週間以内に問題への対応がみられない場合に内閣への支持を撤回する旨を伝えた。オリ首相は,前向きな対応を表明し,憲法改正の問題は翌年に持ち越されることとなった。

選挙,オリ首相に対する国外の反応

2017年に実施された選挙について欧州連合選挙監視任務(EU EOM)は,3月20日に報告書を選挙管理委員会に提出した。EU EOMは2017年10月25日から2018年1月3日までネパールに滞在し選挙活動を監視した。報告書では,選挙区の割り当ての効果,透明性や公平性を担保した選挙を実施するための選挙管理委員会の業務のあり方などについて10の提言がなされた。ネパール国内で物議を醸したのが,「憲法で定められている比例代表の対象集団を,差別を受けている少数者に限定し,カス族-アーリア系(Khas-Aryas)を外すこと,キリスト教徒を対象とすること」という提言であった。カス族-アーリア系は,古代にインド北部からネパールに移住してきたとされ,現代ネパールではブラーマンやチェットリといった上位カーストがこのグループに含まれることになる。この提言に対して,3月25日にオリ首相は,「ネパールは主権国家である」ことを強調し非難した。26日には各党の議員が,主権への干渉にあたるとして懸念を表明した。28日に外務省は「提言は,ネパール国民の包摂の理念に対する直接的な挑戦である」と抗議した。

10月1日,第73回国連総会に出席するためにアメリカを訪問していたオリ首相は,ネパールの平和と民主化に寄与したことが認められ,コスタリカのサンホセで国連平和大学より名誉学位を授与された。首相は,「平和を愛するネパールの人々の平和構築と理解が承認された証である」と謝辞を述べた。

新政権に対する国内の評価

「首相就任100日目の希望,挑戦」と題した『カトマンズポスト』紙の5月26日付の社説は,“繁栄したネパール,幸せなネパール人民”を掲げるオリ政権は,明るい将来を期待する多くの人々の支持を集めていると評価している。また,マデシ系政党との良好な関係構築,輸送カルテルの壊滅や金の密輸への厳しい取り締まり,停電の解消,5月のモディ首相の来訪による対インド関係の改善,統一共産党の誕生についても人々の評価は高いとしている。

しかし,政権の安定運営において懸念事項がないわけではない。「13歳のニルマラのレイプ殺人事件が不必要に政治化されている」(The Kathmandu Post,2018年10月4日)というタパ内務大臣の言葉に懸念が表れているように,野党の与党批判の契機になるような出来事が起きている。ニルマラ事件とは,13歳のニルマラ・パントが友人宅から戻らず翌日の7月27日に遺体で発見された事件である。連日のように少女に対する暴行事件が報道されるなかで,この事件が大きく取り上げられた理由は,犯人隠匿とも思われる警察のずさんな捜査,誤認逮捕が相次いで発覚したからである。全国的な抗議活動に発展し,8月26日に政府が真相解明のため内務省にハイレベル委員会を設立した。9月17日にニルマラの両親が真相解明を求めて首相と直接対面し,翌日には両親の支持を表明したNCの抗議活動にニルマラの両親が参加するなどの異例の展開を迎えた。10月7日にハイレベル委員会より報告書が公表されたが,犯人は逮捕されていない。抗議が続くなか,11月18日に,2011年から2013年にかけて首相を務めたバブラム・バッタライ率いる政党ナヤ・シャクティ・ネパール(新しい力ネパール)が,ニルマラの両親を支援するために抗議活動に参加するなど,政権批判の材料となっている。

全国医学教育法案についても,同様の事態が生じている。都市部と地方の医療格差の是正,医療の営利化の是正を求めて,公立医科大学の定員の75%に無償の奨学金を供与すること,カトマンズ盆地において向こう10年間私立の医科大学の設立を認めないことを求めたトリブバン大学教授で外科医のゴビンダKC医師が6月30日からハンガーストライキを敢行,多くの医療関係者も支持した。7月4日には,NCもKC医師の支持を表明し,政治的な論争へと発展した。オリ首相は7月10日にKC医師の要求に応えることは非現実的と発言しながらも,7月26日に医師会の抗議活動や世論を背景に政府は,KC医師と改正に向けて9項目の合意を図った。しかし,KC医師の要望を取りこんだ改正案が年内に議会を通過することはなかった。

経 済

2017/18年度の経済概況

地震からの復興に加え,2016/17年度に生じた大規模洪水の被害で経済成長の停滞が懸念されていたが,予想に反し好調な経済成長が見込まれた。政府がネパール暦2075年ジェト(5/6月)に発表した経済白書(Economic Survey 2017/18)によれば,過去10年の間の年平均成長率が4.3%である一方,経済成長(基本価格ベース)は2017/18年度において5.9%であると見積もられている。これは,流通(供給)システムの改善,電力供給の改善,選挙後の安定政権による投資環境の改善による。本会計年度最初の8カ月で整備された道路は中心部で1348キロメートル,地方で459キロメートルに及ぶ。また,発電量は,前年度に比べて7.4%増加し1045MWに達した。

当該年度の農業・林業・水産業・鉱業・採石を含む第一次産業のGDPに占める割合は28.2%,第二次産業は14.2%,第三次産業は57.6%と見積もられている。

対外貿易収支については,2017/18年度の最初の8カ月間に,貿易赤字は前年同期比23%増大し7139億4000万ルピーであった。その要因として,貿易全体で輸入に対し商品輸出が占める割合が大幅に減少していること(2004/05年度の28.2%に対し,2016/17年度は6.9%まで減少),国際市場における石油価格の上昇などが挙げられる。商品輸出額に関しては,同期間に10.8%増大している。中国への輸出額は62.0%,インドへの輸出額は9.8%増大した。主な輸出品は,インド向けではブラックカルダモン,麻製品,生姜,薬草など,中国向けではパシュミナ,手工芸品,絨毯が増加している。しかし,輸入がそれらを上回っている。

国家財政の赤字については,政府の支出が増加するにつれ,増加傾向にある。今期の赤字(対GDP比)は2016/17年度の7.2%からおよそ3ポイント上昇し,10.4%に達すると予測されている。2017/18年度,プロジェクトの遅延など効果的・効率的な予算執行における課題が指摘されていたが,最初の8カ月の財政支出は前年同期比45.1%増加,設備投資も38.9%増加し執行は前年度よりも改善した。しかし,国家の威信プロジェクトを含む大規模インフラ建設計画の遅れは資材や人件費の高騰を招き,財政圧迫の要因のひとつになるとの指摘がある。カトマンズ郡行政事務所によれば,6月の時点で598の公共事業のうち50%以上のプロジェクトに遅延がみられ,88の公共事業が納期日を過ぎても進展がないことが明らかになった。政府は罰則を強化することを決め,公共事業の遅延を引き起こしている企業の関係者を逮捕した。逮捕者の1人は25件の公共事業の遅れが指摘されるPAPPU建設の所有者でありパルサ3区で当選したラウニヤル代表議会議員(停職中)で,汚職事件に発展した。12月5日には,道路管理局が遅延を引きおこしている企業の証券差し押さえを計画していることを明らかにした。

消費者物価上昇率は,会計年度はじめの8カ月の平均は4.0%で,前年の5.2%と比べると低い。ただし,3月半ばの消費者物価上昇率は前年の2.9%に対し6.0%に上昇している。これは,冬季の天候不良によって野菜価格が高騰したことによる。

11月1日に世界銀行が公表した『ネパールの発展最新版:発展のための資金を最大化する』でも,本会計年度の経済成長率は6.3%と見込まれている。その背景として,民間投資による建設部門の成長,政府による震災からの復興事業や地方分権による地方事務所の設置による公共投資,2018年の第4四半期の送金の増加による個人消費増,観光客の増加,電力制限の縮小,製造能力の拡大を挙げている。投資は,総固定資本形成の4.4%を占める。そのうちの84%は民間セクターからのものである。

他方で,持続的で安定的な経済成長の鍵は民間投資と輸出が握っているとしている。投資を引きつけるための適正規模の市場の整備,投資環境における透明性の担保,法的枠組みの整備が求められる。国外への移動や送金への外的なショックによる国際収支の悪化,個人貯蓄の縮小,貸付資金および流動性の不足への注意も喚起している。

貧困削減・賃金改定・出稼ぎ労働者の待遇改善

オリ首相は5月30日にカトマンズで開催されたマルクス主義,社会主義の国際的なセミナーで「ネパールが2022年までに後発開発途上国(LDC)を卒業し,2030年までに中所得層国に到達するために,“繁栄したネパール,幸せなネパール人民”というモットーを掲げ邁進する」と発言した。5月21日にネパール政府は次の5年で1人当たり国民所得を2倍に増加させる方針を提示している。

2017年度,貧しいコミュニティを支援するための貧困削減基金による地域のインフラ整備事業,すなわち,コミュニティの道路,小規模水力発電,学校整備,揚水は新規が167件,継続が529件であった。3月半ばの時点でこれらの事業から98万4421世帯が恩恵を受けた。

2年ごとに国内労働者の最低賃金改定を定めている2017年改定の労働法2074(2017)に従って,7月16日から開始された新会計年度より最低賃金が1カ月当たり9700ルピーから1万3540ルピーに上昇した。

現地報道によると「過去10年で,ネパールは4兆4800億ルピー相当の送金を受け取るのと引き換えに6700人を超す労働者の死に直面した」( The Kathmandu Post,2018年11月5日)。こうした状況を受けて,政府は出稼ぎ労働者の待遇改善に乗り出している。5月17日,政府はマレーシア行きのネパール人労働者に課せられていたビザ取得過程での諸経費徴収の廃止を宣言し,マレーシア政府との交渉に入ることを宣言した。そして,10月29日,ネパールとマレーシアは労働者の募集,雇用,本国送還に関わる新しい労働協定に署名した。これにより,これまで労働者が負担していた人材コンサルタントへの手数料,往復航空券料,労働者の査証料,医学的検査やセキュリティスクリーニングにかかる経費,労働者が死亡した際の遺体の移送費用を雇用主が負担することになった。9月にマレーシアでは最低賃金が引き上げられ,ネパール人労働者は翌年1月より1カ月当たり2万8974ルピーの最低賃金を受け取れるようになることが決まっており,重ねての朗報となった。しかし,マレーシアの格安航空会社エア・アジアは空港使用料の滞納金を支払わないまま10月13日にネパール=マレーシア間の運航を取りやめ,協定締結を前にしてのサービス停止を嘆く声が聞かれた。ネパール人出稼ぎ労働者の受け入れ条件の改善は,他国にも広がりそうだ。カタールは早くもゼロコストの受け入れに関心を示している。

自然災害への対応

前掲の経済白書によれば,地震からの復興は,期待したほどの進展はみられなかった。被災者のうち89.0%が分割による第1回目の復興見舞金を受け取り,34.0%が2回目を受け取り,8.0%が3回目を受け取った。被災者の13.0%のみが家を再建した。また,2017/18会計年度はじめの8カ月で被災した公立学校の43.0%,歴史的建造物の13.0%,病院の49.0%,政府庁舎の36.0%,上水道の18.0%が再建された。

雨季にネパール各地で洪水が頻発した。7月15日のバクタプル郡政府の発表によれば,7月12日に発生した洪水被害による同郡の被害総額は1億1930万ルピーに上った。

対外関係

インドとの関係修復:インフラ支援事業の進展

2016年にマデシの要求に沿うよう国境を封鎖し,オリ首相を退陣に追い込んだインドは,2017年12月の選挙での左派連合の圧勝を受けてすぐにネパールとの関係修復の動きをみせた。選挙から2週間が経過した2017年12月22日にモディ首相は,当時のデウバ首相,オリCPN-UML議長,ダハールCPN-MC議長とそれぞれ20分程度の電話会談を行い,オリ議長に選挙での勝利への祝意を伝えた。インドでは,左派連合の圧勝は対ネパール外交政策の失敗による親中化の表れであるとして懸念をもって受け止められたことが背景にあるという。プラカシュ・カラット・インド共産党(マルクス主義)前書記長は,「モディ政権は,内政不干渉の立場をとりネパールと対等な協力関係を築くよう努力するべきだ」という意見を寄せている(The Indian Express,2017年12月25日)。モディ首相は,2018年1月21日には次期首相と目されていたオリ議長と電話で会談し,新年の挨拶を伝えるとともに早くも首相としての訪印を歓迎する旨を伝えた。また,オリ議長もモディ首相の来訪を歓迎し,前回の来訪では参拝が叶わなかったラム・ジャナキ寺院とムクティナート寺院への巡礼を勧めたという。インドの共和国記念日にあたる1月26日にオリ議長は,モディ首相に書簡を送り,選挙で選ばれた連邦議会の最大政党のリーダーの1人として両国のよりよい関係構築のための協力をモディ政権に期待している旨を伝え,「両国の悪化した関係の雪解け」が近いことを印象づけた。そして,首相就任のおよそ2カ月後の4月6日から3日間の予定でオリ首相が訪印し,翌5月11~12日にかけてモディ首相が来訪した。両者の往来により,大きく3つのインフラ事業の合意が交わされた。

インドの港とネパールをつなぐ物品移送のための水路整備,および,カトマンズ=ラクソウルの鉄道敷設については,4月のオリ首相訪印時に話し合いが行われ,5月のモディ首相来訪時に事前調査についての合意が交わされた。4月29日には58個のコンテナを積んだ試験走行の貨物列車がネパールのビラトナガルにほど近いインドのビハール州バタナ駅に到着した。20年以上工事が中断していたアルン第3水力発電プロジェクトについては,5月10日にはネパール政府から同社に発電の許可証が発行され,事業に着手されることになった。アルン第3水力発電プロジェクトは1992年にネパール政府が発案し世界銀行が出資を決めていたものだったが,環境保護団体の反対により1995年に世界銀行が撤退,2008年3月2日にネパール政府とインドの国営SJVNとの間に覚書が交わされながらも進展がないまま放置されていた。インドによるインフラ整備支援の遅れが,ネパールが中国へ接近するのを加速させたという意見も出されていただけに,インドにとっては親中化への懸念を払拭することに,ネパールにとっては,インド,中国とのバランス外交の成果になった。

なお,5月19日には,ビラトナガルにあるインドのフィールドオフィスが閉鎖されることが決定された(8月1日に閉鎖)。インドのフィールドオフィスは2008年に,ネパールのコシ川の洪水により破壊された東西ハイウェーの修復のためにインドが一時的な現場事務所としてビラトナガルに設置したもので,修復が終了した2009年にネパール側が退去を要望したものの不法に留置されていた。ネパール国内では大きな問題とはされなかったものの,一部からはインドによる不法な占拠に批判の声が出ていた。

モディ首相の来訪についての人々の反応は冷ややかであった。市民団体のなかには,2016年のインドによる国境封鎖に抗議し,滞在期間中にモディ首相に謝罪を求めるよう訪問地のジャナクプル市長やカトマンズ市長に要望する団体もあった。また,Twitter上で「#BlockadeWasCrimeMrModi」「#ModiNotWelcomed-InNepal」など,モディ首相を非難し,歓迎しない旨を記したツイートが飛び交い話題を呼んだ。しかし,大きな混乱はなく訪問は終了した。

中国との関係

オリ首相は6月19~24日に,首相に選出されてから初の訪中を実現させた。滞在中に中国と8つの合意文書と覚書に署名した。これらは,水力発電プロジェクト,セメント産業の開発,果実と野菜のフードパーク設立に関わるものである。6月21日に中国とネパールが署名した14の合意文書は,道路,鉄道,航空,および通信のような重要なコンポーネントの連結性を強化するために「一帯一路」構想(BRI)下で協力すること,およびヒマラヤ横断的な地域間の接続と投資誘致に関係するものであった。このうち,鉄道については2016年3月22日のオリ首相訪中時にすでに中国側と同意されていたもので,それを前進させることが確認された。中国は5月にカトマンズ=ケルン鉄道の実現可能性のための地質学的なプレ調査を実施し,12月11日にカトマンズで開催されたネパール・中国鉄道共同委員会で報告書をネパール側に手渡した。両者は,今後,詳細な報告書を作成することに合意した。鉄道は,全長80キロメートル,総工費3000億ルピー,完成に約8年を要すると見積もられている。ヒマラヤ横断的な地域間の接続を支援する中国外交の進展は,インドの対抗策としてのインド=ネパール間の鉄道事業を加速させているとの報道もある。『カトマンズポスト』の2018年6月26日付の社説は,「中国の重商主義的な関心は,インドとの良好な関係を排除するものではない。一方と関係を強く結び一方と敵対するのは得策ではない」とし,「ネパールの国益に合致するネパール・インド・中国の3カ国協力」(Nepal-India-China [NIC]trilateral cooperation)を築き,ヒマラヤを越境するインフラ整備事業によって,いかにネパールが2つの大国から経済的メリットを引き出せるかが重要であると指摘した。

入札過程が不透明だとして前デウバ政権によって中止されたブディガンダキ水力発電プロジェクトは,9月23日に一転,再び中国の中国葛洲壩集団公司に建設が委託されることになった。

中国企業が受注した公共事業のなかで安全保障上の理由で物議を醸しているのが,総理府内のテレビ会議用のネットワークの整備である。ネパール政府は,競争入札を中止し12月末に華為技術(ファーウェイ)社と契約を結んだ。安全保障政策に詳しい専門家ゲジャ・シャルマ・ワグレ氏は,「国内の企業も受注可能な技術をもつなかで,国家の安全保障の中枢に海外企業を入れることは情報漏洩といった安全保障上のリスクにつながる」と警告している( The Kathmandu Post,2018年12月31日)。

その他の外交関係

国際社会でのネパールの地位を示す動きとして,2018年4月16日にネパールが国連女性機関の執行委員会および開発のための科学技術委員会委員に選出されたことが挙げられる。任期は2019年から2021年である。

地域外交の動きとして,8月30,31日の2日間にカトマンズで開催された「ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアティブ」(BIMSTEC)の第4回サミットが挙げられる。31日に18項目のカトマンズ宣言に署名がなされた。宣言では,1997年のバンコク宣言の原則に依拠し,主権者間の平等,領土保全,政治的独立,内政不干渉,平和共存,相互利益の原則への敬意に基づくBIMSTEC内の技術的,経済的活動における協力,それを可能にするための運営組織の能力強化について合意された。そして,総額500億ドルに上る区域内の連結性向上のための交通,越境の円滑化,複合一貫輸送,インフラストラクチャー開発,航空・海上運送,人材開発,通信などに関連した167の多様なプロジェクトの推進についても合意された。プロジェクト推進にはアジア開発銀行(ADB),世界銀行をはじめとする援助機関も資金的な支援に関心を示している。ADBは,2010年にプロジェクトの期待される効果を予測した報告書『BIMSTEC Transport Infrastructure and Logistics Study』を発表している。

近隣のバングラデシュとは12月4日に政府間投資によって水力発電プロジェクトを推進することが合意された。バングラデシュとは2年前に協定に署名されていたが,その後,商業省とエネルギー省間の調整に失敗し保留になっていた。ネパールからインドを経由してバングラデシュに電力を輸出するためにインドを交えた3カ国で協議されることになる。

2019年の課題

内政では,年度内に解決をみていないマデシの要求する憲法改正,ネパール共産党の下部組織の統合,ニルマラ事件の真相解明が次年度の課題として挙げられる。憲法改正について,マデシ系政党は改正に着手しなければ内閣不支持に回るとしており,政権の安定的な運営のためにこれ以上の議論の先延ばしは難しい。また,ネパール共産党の下部組織の統合についても,ほぼ3分の2の議席を占める安定政権の維持のために必要なプロセスになる。役職をめぐる各党出身者の調整におけるオリ,ダハール両共同議長の手腕が試される。さらに,ニルマラ事件の真相解明については,12月23日に市民による大規模な抗議活動が行われ,今後の政府の対応によっては政権の不安定材料になる可能性が払拭できない。

経済では,持続的で安定的な経済成長の鍵を握るとされる民間投資,輸出の促進が課題といえる。投資を引きつけるための適正規模の市場の整備,投資環境における透明性の担保,法的枠組みの整備が求められる。また,商品輸出を増やすために物理的なインフラストラクチャーの整備,投資環境の整備が課題になるといえる。

外交では,ネパール,インド,中国との3カ国協力の実現に向けた3カ国間の友好的な関係構築が課題となるだろう。インド,中国はともにネパールへの鉄道敷設をはじめとするインフラ整備に投資をしている。ネパールが大国の単なる通過点とならず連結性向上によるメリットをどれだけ引き出せるかが今後の課題となる。

(福岡県立大学准教授)

重要日誌 ネパール 2018年
   1月
2日 ヤダブ選挙管理委員会委員長,国民議会(上院)選挙を2月8日に実施することをデウバ首相に提案。
5日 政府,上院議会選挙を2月7日に実施することを閣議決定。
7日 オリ・ネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派(CPN-UML)議長とダハール・ネパール共産党毛沢東主義センター(CPN-MC)議長が会談。両党の統合作業の開始に合意。
12日 ネパール・中国間の光ケーブルの商業的運用が開始。インドの独占状態が崩れる。
17日 CPN-UMLとCPN-MC,上院議会選挙における議席配分を各29と14に決定。
17日 ネパール政府,各州の州知事及び州都を決定。州都は,第1州:ビラトナガル,第2州:ジャナクプル,第3州:ヘタウダ,第4州:ポカラ,第5州:ブトワル,第6州:ビレンドラナガル,第7州:ダンガディ。
21日 各州において,州知事の下で州議会議員の宣誓式を実施。
21日 モディ印首相,オリCPN-UML議長と電話で会談。
   2月
1日 オリCPN-UML議長とスワラージ印外務大臣,両国の将来について対談。
1日 インド,次年度のネパールへの贈与を74%増やすことを表明。
7日 上院議会選挙実施。左派連合が3分の2議席を獲得。
8日 タライでの寒波で野菜価格が急騰。
13日 インド特使,オリCPN-UML議長と面会。
14日 CPN-UML,首相にオリ議長を選出。
14日 第2州議長,ヒンディー語で宣誓。
14日 CPN-UMLとCPN-MCによる党の統合調整委員会の会合がはじまる。
15日 デウバ首相,辞任。
15日 オリCPN-UML議長,第41代首相に就任。
18日 オリ首相,デウバ政権下での全決定を保留にするよう指示。
18日 オリCPN-UML議長とダハールCPN-MC議長が政党の統合に向けて会談。19日,統合に向けた7項目の合意がなされた。
22日 84の地方自治体が名称や役場の所在地を変更。
22日 腐敗指数が改善。9位上がって122位。
23日 閣僚会議,首相を含め大臣を最大25人に規定する憲法に従い大臣数を決定することを確認。
   3月
2日 韓国産業人力公団,雇用許可システム下で2019年に約7000人のネパール人労働者の受け入れを表明。
2日 国際的シンクタンクDQ Instituteによれば,ネパールの8~12歳の年齢グループの約半数がサイバーいじめ,ゲーム中毒,オンライン中毒などのリスクにさらされている。
5日 アバーシー・パキスタン首相,2日間の日程で来訪。
5日 オリ首相,第2州との関係強化のため,連邦社会主義フォーラム・ネパール(SSF-N)に2つの大臣ポストを割り当てることを示唆。
9日 小川大使,第44回ネパールJICA帰国研修員同窓会プログラムの場でネパールへの継続的な支援を表明。
9日 インド,ゴルカ地震で被害を受けたゴルカ地区,ヌワコット地区の5万棟の再建のために1620万ドルを国連開発計画と国連プロジェクトサービス機関に供与することに署名。
10日 年齢詐称が問われていたプラジュリ最高裁判事,証明書提出を拒否。
13日 大統領選挙実施。バンダリ大統領,ネパール国民会議派(NC)推薦の候補に3倍以上の差をつけて再選。
15日 プラジュリ最高裁判事辞任。年齢詐称などで事実上の解任。
16日 オリ首相,内閣拡大。新大臣15人を任命。内閣は22人に。
18日 プン氏が副大統領に再選。
19日 真実和解委員会,紛争犠牲者への賠償方針について人権活動家との対話を開始。
21日 政府,2017年に実施された選挙についての欧州連合選挙監視任務の報告と提言を拒否。
22日 世界銀行,公的な財務管理強化のためにネパールに2億ドルを提供することを決定。
22日 インド政府,オリ首相の4月6日から3日間の訪印を提案。
25日 オリ首相,欧州連合選挙監視任務を非難。
26日 政府,州および村議会の長にも公用パスポート授与を決定。
26日 様々な政党の議員,自治への干渉として欧州連合選挙監視任務の報告書に懸念を表明。
29日 政府,公務員に対し89日ある国民の祝祭日のうち信仰に関係なく全国民に適応される祝祭日を67日とし,事実上祝祭日を22日減らすことで調整。
   4月
3日 代表議会(下院)と国民議会(上院)で構成される連邦議会の初の会合が開催。
5日 インド国民会議派マニ・シャンカル・アイヤール氏,モディ首相にネパール内政に介入すべきでないと助言。
6日 オリ首相,3日間の予定で訪印。
12日 共産党チャンド派の幹部2人,1週間前のウダヤプルの爆発への関与で逮捕。
16日 ギャワリ外務大臣,5日間の日程で訪中。
17日 中国,17座席のY12e航空機2機をネパール航空(NAC)に供与。
18日 ダハール議長,CPN-MCとCPN-UMLの統合は5月半ばまでに実施される予定と発言。
22日 ヤダブ選挙管理委員会委員長の住居で爆弾が爆発。死傷者なし。
22日 ニラウラ元ネパール警察副監察官が33キログラムの金密輸事件に関わった疑いで逮捕。
23日 バングラデシュ,インド,ネパール間のバス試験走行が実施。
29日 アルン第3水力発電プロジェクトの事務所で爆弾が爆発。
   5月
4日 50の公的輸送会社が政府による輸送シンジケート取り締まりを支持。
4日 政府,反マネーロンダリングの名目で反抗的な輸送シンジケートの銀行口座を凍結。
4日 輸送業界のスト失敗。政府,26のマイクロバス会社の通行許可証を剥奪。
5日 11人の違法な北朝鮮労働者が逮捕。
6日 政府と輸送業者,輸送シンジケートを終了させる政府のイニシアティブに同意。
8日 市民団体のメンバー,モディ印首相に謝罪を求めるようカトマンズ,ジャナクプル市長に要望。
9日 政府,公務員の優遇を廃止。
11日 モディ印首相来訪。
12日 インド,カトマンズ=ラクソウル鉄道敷設事業の実現可能性調査実施について了解覚書の草案を作成。
12日 モディ印首相,帰国前にデウバ氏,ダハール氏とそれぞれ面会。
15日 ゴビンダKC医師,法外な授業料を設定している医科大学に対する行動を政府に要求。
16日 CPN-UMLとCPN-MCの統合。ネパール共産党(NCP)誕生。翌17日に発表。オリ,ダハール両氏が共同議長に。
19日 NCP統合後初の会合が開催。オリ共同議長が党首(PPリーダー)に選出。
19日 政府,公共事業の遅れを生じさせている建設会社に対し措置。逮捕者も。
19日 トリブバン国際空港,稼働時間を2時間30分拡大し21時間空港に。
22日 中国の技術チーム,ケルン=カトマンズの鉄道敷設の実現可能性調査のプレ調査をネパール側で開始。
24日 環境省,ニジガード国際空港の環境アセスメント(EIA)リポートを承認。
27日 紛争被害者,政府に正義を求める。
28日 スワラージ印外務大臣の「モディ首相はアメリカのマディソンスクエアからネパールのジャナクプルに至る10万ものインド人に式辞を述べた最初の首相」発言が物議を醸す。同外務大臣はtwitterを通して謝罪。
29日 政府,紛争時の殺人の疑いがかけられているかつてのマオイスト幹部のドゥンゲル氏に31日に恩赦を出すことを決定。
29日 インド政府,郵便道路開発のために5億5500万ルピーの補助金を提供。
   6月
1日 SSF-Nから2人の閣僚が就任。ヤダブ党首が副首相兼保健・人口大臣,ラヤ議員は都市開発大臣に。
1日 オリ首相,訪中を前に中国大使と面会。
2日 カトマンズ郡行政事務所によれば,598の公共事業のうち50%以上に遅れ。88もの公共事業が締め切り後も進捗なし。
3日 ネパール石油公社,国際市場での値上げを理由に燃料価格を引き上げ。
6日 選挙管理委員会,NCPを政党に登録。
8日 代表議会,代表議会(下院)法を承認。
10日 国民議会,国民議会(上院)法を承認。
10日 国家国民党ネパール(RJP-N)マハト議員,マデシの権利が憲法によって保証されるまで連邦議会に参加しないと発言。
12日 ネパール中央銀行によれば,燃料輸入額が最高額の1310憶ルピーに。
12日 ディパック・ラジ氏が新しい最高裁判事に就任。
18日 ネパール,日本との航空協定を改定。羽田空港以外の空港への週14便の運航に合意。
19日 オリ首相,5日間の日程で訪中。
20日 オリ首相,習近平中国国家主席と会談。8つの合意文書と覚書に署名。
21日 ネパール・中国友好マラソンが北京で開催。
25日 アジアインフラ投資銀行(AIIB),100万ドルを送電網の向上のために贈与。
26日 政府,前国王の娘が婚資として取得した土地を封印。
27日 ネパール,ベルギーと国際問題に対処するための多国間協働政策についての了解覚書を締結。
30日 反人身売買活動家スニタ・ダヌワル氏,アメリカ合衆国国務省より10人の名誉ある活動家に選ばれる。
30日 ゴビンダKC医師,全国医学教育法案の修正を求めてハンガーストライキを開始。
   7月
3日 ゴビンダKC医師の抗議活動を支持したカルナリの医療関係者,緊急時を除いた病院のサービスを停止。
4日 NC,ゴビンダKC医師を訪れて要望を検討するための委員会を設置。KC医師への政府の対応をめぐり抗議活動を実施。
4日 NC,ゴビンダKC医師が求める提案を議論することを要求。政府が法案を取り下げ。
4日 政府,デウバ政権下で決定された7つの州知事ポストの内定を撤回。
5日 ゴビンダKC医師,政府の医療援助を拒否。
6日 政府,NCとゴビンダKC医師の抗議にもかかわらず全国医学教育法案を議案登録。
9日 先住民族組織NEFINなど,ガンダキ州の名前を民族名にちなんだタムワン-マガラトにするよう要求し,ゼネスト実施。
10日 オリ首相,ゴビンダKC医師の要求に応えることは非現実的とNCP議員に発言。
11日 ネパール医療協会(NMA),KC医師に賛同して午前の1時間の医療サービスを停止することを決定。
15日 シスドールごみ埋立処分場が処分不能に。首都の家庭ごみ収集1カ月行われず。
17日 全国医師協会,バブラム・バッタライ氏率いるナヤ・シャクティ・ネパール(新しい力ネパール),NC系列のネパール学生自治会(NSU)がゴビンダKC医師を支持してデモを実施。
17日 NC,政府の独裁的な傾向に対して19日より抗議プログラムを実施することを発表。
20日 ゴビンダKC医師を強制的に首都に移送することに反対した医師や学生,警察と衝突。20人が負傷。
20日 オリ首相,抗議活動を考慮してKC医師を見舞う。
20日 デウバNC党首,ゴビンダKC医師を訪問しNCの支持を伝える。
21日 KC医師の支持者と警察が衝突。23人が催涙弾を浴び,警察官11人が負傷。
22日 タマン法務・司法・国会担当大臣,「医学の学位をとるために売春してバングラデシュに行ったネパール人女性」と発言し批判が相次ぐ。24日に批判を受け辞任。
22日 200人がゴビンダKC医師を支持するため集団ハンガーストライキに参加。
23日 政府,紛争時に殺された息子クリシュナ・プラサド・アディカリの正義を求めてハンガーストライキをしている母親ガンガー・マヤに慰謝料1000万ルピーの支払いを決定。
26日 NMA,ゴビンダKC医師がハンガーストライキを終えるまで,緊急時を除いたすべての医療サービスの停止を発表。
26日 デジタル会議が開始。政府はラップトップ・コンピュータを全閣僚会議大臣に供与。
26日 政府,ゴビンダKC医師と全国医学教育法をめぐり9項目を合意。
29日 王亜軍中国共産党中央対外連絡部副部長,オリ首相を表敬訪問。
30日 王亜軍中国共産党中央対外連絡部副部長,ダハールNCP共同議長とデウバNC党首と会談。
31日 ゴビンダKC医師との協定を受けて全国医学教育法の改正案をNCPが提案。
   8月
1日 インドのフィールドオフィス閉鎖。
3日 オリ首相,新しい法務・司法・国会担当大臣にバヌ・バクタ・ダカル氏を任命。
3日 タイのLCC タイ・ライオン航空が就航。
17日 新刑法,民法が施行。
21日 国際ジャーナリスト連盟,新刑法が表現と報道の自由を制限すると発表。
23日 13歳のニルマラへの暴行殺人事件への抗議活動が暴徒化しマヘンドラナガルで外出禁止令が発動。
24日 ニルマラ事件の解明を求める運動と警察が衝突し24人が負傷,1人が死亡。
24日 オリ首相,ニルマラ事件の抗議運動の高まりに応じ,ハイレベル委員会の結成を促す。
30日 第4回ベンガル湾多分野技術経済協力(BIMSTEC)サミット,カトマンズで開催。翌日,18のカトマンズ宣言締結で閉会。
31日 政府,カトマンズ=ラクソウル鉄道敷設の予備調査についての覚書をインドと交換。
   9月
2日 全国の医師,新刑法の医療過誤の罰則(232節)に反対して救急治療を除いた医療サービスを停止。数十万の患者に影響。
11日 南スーダンでのネパールの平和維持活動,国連から賞を授与。
17日 ニルマラの両親,第7州の議員,人権活動家とともにオリ首相を訪問。
18日 5歳から12歳までの学校教育の無償化を定めた無償義務教育権利法が発効。
18日 SSF-N,9月19日の憲法記念日に抗議しない旨を発表。
18日 ニルマラの両親,マヘンドラナガルでのニルマラ事件の解決を求めるNC支持者主催の行進に参加。
22日 2カ月に及ぶネパール=インドの内陸水路の実現可能性調査が終了。
23日 オリ首相,第73回国連総会に参加するためニューヨークに出発。
25日 ハイレベル委員会,ニルマラ事件の報告書を内務省に提出。
   10月
1日 オリ首相,コスタリカの国連平和大学から名誉博士号を授与。
7日 RJP-N,憲法改正の審議などを要望しオリ政権支持の撤回を示唆。
14日 中国の国有企業中国航空国際工程有限公司,トリブバン国際空港の整備事業を入札。
16日 オリ首相,RJP-Nに憲法改正を約束。
21日 第5州のカピルバストゥのクリシュナナガルでヒンドゥーとムスリムの対立。外出禁止令が発動。
28日 ネパール政府と中国政府,中国政府がネパール国軍の災害管理能力の強化,国連平和維持活動の装備改善のために253億ルピーを供与するとする了解覚書に署名。
29日 ネパール,マレーシアと移民労働者受け入れについての新しい労働協約を締結。
31日 ネパール外務省,モンゴル外務省と二国間協議メカニズムについての初の会合。
   11月
1日 世界銀行,ワーキングペーパーのなかで2018年度のネパールの経済成長を6.3%と予測。
2日 政府,2012年の実施以来2回目となる貧困調査の準備に着手。
14日 RJP-N,憲法改正の約束を守るよう政府に警告。
18日 新しい力ネパールがニルマラ事件犯人の即時逮捕を政府に求め,抗議活動への参加を決定。
21日 NCPの22人の中央委員会メンバー,中央委員会の早期招集を要求する覚書を党委員長に提出。
   12月
4日 RJP-N,オリ首相に対し憲法改正を進めなければ支持を撤回する旨を警告。
4日 ネパール,バングラデシュと共同の水力発電プロジェクトに合意。
11日 中国,ネパール・中国鉄道共同委員会でカトマンズ=ケルン鉄道の実現可能性のための地質学的なプレ調査の結果をネパール側に手交。
17日 NCPの常任委員会メンバーは共同議長による下部組織の統合案,党の政治構想案を非難。
17日 ミスネパール,ミスユニバース大会で初のトップテン入り。
19日 カトマンズ市,中国鉄建股分有限公司と環状道路に沿ったモノレールの建築の詳細プロジェクト報告(DPR)の実施についての覚書に署名。
23日 市民,ニルマラの死後150日目を迎えるにあたり真相究明を求めて抗議活動を実施。
25日 RJP-Nのリーダー,憲法改正などの実現を求めて首相官邸でオリ首相と会談。

参考資料 ネパール 2018年
①  国家機構図(2018年12月末現在。一部は「ネパール憲法2015」の規定による)
②  政府要人および第2次オリ内閣(2018年発足)の閣僚

(注) 氏名の後のカッコ内は所属政党。NCP:ネパール共産党,SSF-N:連邦社会主義フォーラム・ネパール。*は女性。1)2019年2月27日にヘリコプター事故で死去。2)7月24日に辞任した前大臣に替わり8月3日に就任。

(出所)ネパール政府ウェブサイト(https://www.nepal.gov.np/NationalPortal/view-page?id=41),My Republica(https://myrepublica.nagariknetwork.com/news/uml-leader-shivamaya-tumbahamphe-elected-deputy-speaker/),Nepal Research Website on Nepal and Himalayan Studies Politics(Council of Ministers)[Updated 25 July 2018](http://www.nepalresearch.com/politics/background/ministers.html)参照。

主要統計 ネパール 2018年
1  基礎統計

(注) 1)暫定値。 2)外貨売り渡しと買い取り価格の年平均値。

(出所) Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2017/18, Macroeconomic Indicators.

2  支出別国内総生産(名目価格)

(注) 1)在庫変動が残留して引き出されるので統計上の誤差/エラーが含まれる。2017/18年度の推計による。

(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2017/18, Table 1.6: GDP by Expenditure Method(at current prices).

3  産業別国内総生産(2000/01年固定価格)

(出所) Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2017/18,Table 1.5: Gross Value Added by Industrial Classification(Base year 2000/01 Prices).

4  対外貿易

(注) 1)2017年7月16日から2018年3月15日までの暫定値。

(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2017/18, Annex 6, Table 6.1: Status of Foreign Trade(Rs in ten Million).

5  国際収支

(注) 1)2017年7月16日から2018年3月15日までの暫定値。

(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, Economic Survey 2017/18, Table 6.11: Balance of Payment Summary(Rs in ten Million).

6  国家財政

(注) 1)修正値。2)推定値。

(出所)Government of Nepal, Ministry of Finance, 29 May 2018, Budget Speech of Fiscal Year 2018/19, Budget Summary Annex-1.

 
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