アジア動向年報
Online ISSN : 2434-0847
Print ISSN : 0915-1109
はしがき
深尾 京司
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2019 年 2019 巻 p. i

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はしがき

IMFの世界経済見通しによれば,2018年の先進国・地域の経済成長率は2.3%,日本は0.9%にとどまったのに対して,アジア新興国・地域並びに途上国・地域では4.6%の成長率を記録しました。原油高,アメリカの利上げをきっかけとする為替レート下落,米中貿易摩擦などに見舞われたものの,インフラ投資と旺盛な国内需要,外需に支えられたことが,成長の主な要因とみられます。

順調な経済成長を実現したアジア諸国でしたが,アジア諸国を取り巻く環境は不安定です。アメリカと中国の対立は貿易をめぐる経済面での対立にとどまらず,地域秩序のルール形成など覇権をめぐる対立となっており,アジア諸国は対立のはざまで対応を迫られています。中国の南シナ海の軍事拠点化など領海をめぐる対立がASEAN内にあるものの,経済面ではアジア諸国と中国との関係はインフラ建設にとどまらず,経済パートナーとして不可欠な存在となっているからです。

『アジア動向年報』は,アジアの動向を各国・地域研究者が現地の一次資料に基づいて分析し,的確な情報と判断を日本の政府と国民に提供することを目的として,1970年以降毎年発刊しております。2019年版ではアジアの23の国・地域を網羅し,2018年の動向を政治,経済,対外関係にわたって分析しております。また,各国地域編に加え「主要トピックス」編ではアジアとアメリカの関係,ロシアのアジア政策といったテーマを取り上げ,アジア情勢の総合的な把握に努めました。

2018年版より科学技術振興機構の運営するJ-STAGE上での公開をおこなっており,どこにいても携帯端末で読むことができます。本年報が,世界経済と国際政治において大きな役割を果たしているアジア地域の現状を理解し,将来を展望するうえで一助となることを大いに期待します。

2019年6月

 
© 2019 日本貿易振興機構 アジア経済研究所
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