Anthropological Science (Japanese Series)
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シンポジウム特集
アメリカ自然人類学会の歴史と動向
瀬口 典子
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2008 年 116 巻 1 号 p. 57-66

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抄録
アメリカ自然人類学会(AAPA)の現状と動向を紹介し,その歴史に触れながら自然人類学のあり方の検討を行った。19世紀から20世紀前半のアメリカ自然人類学の研究テーマは「人種タイポロジー」的な理論と方法論が主であった。しかし,1951年のシャーウッド・ウオッシュバーンの「新しい自然人類学」の提唱後に,アメリカ生物人類学は,新しい方法論,理論,仮説検定に焦点をおく科学に変化を遂げた。形質人類学も生物文化的なアプローチを取り,生物考古学の視点やフェミニズムの視点をもって,ゆっくりではあるが,発展してきた。そして,自然人類学の枠だけに留まらず,考古学,文化人類学,言語人類学との融合性を目指した研究テーマを切り開こうと努力している。しかし,近年の司法人類学の人気に伴って,アメリカ自然人類学はウオッシュバーン以前の人種タイポロジー的なアプローチを取る古い形質人類学に引き戻されてしまう危機にも直面している。現在,アメリカ自然人類学会と研究者達は,これまで起こってきた矛盾,批判,反省,議論をアリーナとして,21世紀の社会に貢献するための新しい研究テーマと活動を模索している。
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© 2008 日本人類学会
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