Anthropological Science (Japanese Series)
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原著論文
長崎県佐世保市岩下洞穴から出土した縄文早期人骨群の炭素・窒素同位体比と放射性炭素年代
米田 穣大森 貴之尾嵜 大真栁田 裕三
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2017 年 125 巻 1 号 p. 39-47

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抄録

長崎県佐世保市岩下洞穴から1964年から1966年の発掘調査で回収された縄文時代人骨群から,骨コラーゲンを抽出して炭素・窒素同位体分析ならびに放射性炭素年代測定を実施した。V層出土人骨5個体の較正14C年代は10000~9000 cal B.P.を示し縄文時代早期に由来することが確認された。炭素・窒素安定同位体比からは,(1)若干の魚介類利用が認められるが,(2)大部分のタンパク質を陸上生態系から得ており,(3)その同位体比は草食動物よりも肉食動物に近似すると推定された。このような食生態は山間部の長野県栃原岩陰遺跡から出土下縄文時代早期人骨と類似している一方,沿岸部の縄文時代早期人骨とは明確に異なっている。縄文時代早期には山間部と沿岸部で食生態が異なる適応が存在しており,それが当時の形態学的特徴にも影響を及ぼした可能性がある。

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© 2017 日本人類学会
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