論文ID: 250503
新潟県阿賀野市土橋遺跡から出土した縄文時代後期前葉のC316焼人骨について,骨の焼成変化に関する分析を実施した。C316焼人骨は,遺体が焼かれた後に土坑に再葬された1体の全身骨格であり,左右の上腕骨を対称位置に配置するなど,四肢骨が意図的に並べられた特異な出土状況が認められた。年齢および性別は25歳から壮年期後半の男性と推定され,上顎の右側切歯および犬歯部に抜歯痕が確認された。四肢骨を中心に,焼成に伴う骨の収縮・変形,および骨表面に生じた亀裂について観察と分析を行った。骨の収縮は焼成初期に生じ,特に長さよりも幅や厚さの収縮が顕著であったと推定された。また,焼成による骨の変形や亀裂の様相について,法医人類学的観点から比較分析を行った結果,軟部組織が付着した状態で長時間焼成された焼死体と共通する特徴が見られた。C316焼人骨は,死後比較的短時間のうちに焼かれたと推定され,その葬法は,遺体を十分に高温で焼く方法であった可能性が極めて高くなった。C316焼人骨は,従来情報量が少ないとされていた焼骨からも多様な情報を引き出すことが可能であることを示す,貴重な資料である。