Acta Arachnologica
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キムラグモ精子の電子顕微鏡的研究
大崎 春樹
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1969 年 22 巻 1 号 p. 1-13

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抄録

キムラグモの精巣内精子は,幅約6μの球乃至楕円球状の細胞質膨大部と,これから突出した長さ20~25μのスピロヘータ状の頭部とから成り,先端に特殊な尖体複合体を具えている.尖体は胞状で,その後側面は先端に向って深く陥入して内腔をつくり,ここに尖体繊維が挿入されている.尖体胞は先端部を除くと電子密度の高い顆粒物質で満たされている.尖体胞の内腔から後方に伸び出した尖体繊維は,核の周囲にラセンを形成していて,核膜起原の鞘によって包まれている.核の後端近くの陥入部には1個の中心粒があり,これから出た1本の長い鞭毛は,細胞質膨大部の周縁に3~4回とぐろを巻いている.鞭毛中間部はミトコンドリア鞘に包まれている.動植物を通じて鞭毛あるいは繊毛の横断面が普遍的に9+2型であるのに対し,キムラグモの精子鞭毛は9+3型,つまり,9対の周囲束と3本の中心微小細管とで構成されている.細胞質膨大部には giant body, 膜に包まれたグリコーゲン顆粒群,脂質及び核膜に由来したものと考えられる膜様構造物等が含まれている.

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