Acta Arachnologica
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カブトガニ類の胚発生に及ぼす塩分濃度の影響
杉田 博昭村上 公信関口 晃一
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1985 年 34 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

カブトガニ類は大潮の満潮時頃に海岸や河口の満潮線近くの砂中に産卵する。佐賀県伊万里市多々良海岸のカブトガニが産卵中の海水の塩分濃度は18~33‰であった。このようなことから, カブトガニ類の発生中の卵や胚は塩分濃度のかなりの低下に耐えられるものと思われる。本実験では, 4種のカブトガニ類, カブトガニ (Tachypleus tridentatus), ミナミカブトガニ (T. gigas), マルオカブトガニ (Carcinoscorpius rotundicauda), およびアメリカカブトガニ (Limulus polyphemus) の卵を人工受精させ孵化するまで5‰から35‰の海水中で飼育し, それらの発生率および発生速度を調べた。
カブトガニとアメリカカブトガニの胚は測定された産卵地の海水の塩分濃度の低下に十分よく適応して発生できた。またマルオカブトガニとミナミカブトガニも低塩分濃度下で十分よく発生した。
マルオカブトガニだけが, 大潮の上潮に乗って河を溯り河岸に産卵するので, 本種が最もよく低塩分濃度に耐性があると推測されたが, 実際には低塩分濃度下での発生率は4種の中で一番低かった。

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