抄録
名古屋市におけるクサグモの生活史を調査した. クサグモは年1世代であった. 1齢幼体は3月下旬から4月上旬に卵嚢から出現し, 成体になるまでに6回の脱皮を行った. 雌雄は同時期に成体になり, 産卵は8月中下旬にみられた. ほとんどの網は, ヒサカキ, ネズミモチ, ツゲなど硬く小さい葉が密生した木に造られた. 雌当たり産卵数は, 雌の体サイズ, 特に産卵直前の体重と正の相関があった. クモの体サイズと産卵数を2つの生息地すなわち開けた場所と雑木林の間で比較した. 開けた場所の成体のサイズおよび産卵数は, 雑木林の個体に比べて有意に小さかった. これは, 開けた場所の生息地では餌供給が制限されているためであると考えられた.