Acta Arachnologica
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サスマタアゴザトウムシ Ischyropsalis abei Sato et Suzuki の生長に伴ふ形態の變化
三好 保徳
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1942 年 7 巻 3-4 号 p. 109-120

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抄録

A. 皿ケ嶺に棲むサスマタアゴザトウムシIschyropsalis abei Sato et Suzukiは4月下旬、或はその前後に孵化しその後何回かの脱皮をなし7月下旬成體となる。
B. 成體頭胸部兩側縁に近く存在する數本の微棘は幼形にある微毛の發達しかものである。
C. 眼丘は初は殆ど隆起せす且毛もなし。生長と共に隆起し,或る時期に達して徴毛を生じ成體に於いては微棘數本を有す。兩眼の間は生長すればやや凹む(第1圓, H)。
D. 第1.第2 Thorahalsegmentは幼形の時より決定され,且各節が有する微毛は成體にては第1 Thorakalsegmentに2-6, 第2 Thorakalsebmentに6-12位の極微粒状隆起の上に生する微毛と變つてゐる。
E. 腹部背甲各節には初め微毛認められすして尾端に1對の剛毛を見るのみなれど,その後各節に微毛を生じ生長とともに數と大きさとを増し成體に至つては毛は顆粒状隆起の上に生じて略横列をなす。成體雄の前部5腹背甲が構成するScutumは最後の脱皮に於ける變化によつて生する。
F. 腹部腹側は背側より早く毛の横列を生じこれ又生長とともに數と大きさとを増す。
G. 鋏角は幼形にては短小,武装もなく殊に第1節には毛もなし。その後生長とともに毛を増すが,第1節に生するその毛は規則正しく5列をなして,數と大きさとを増し遂に棘の5縦列をつくる。亞成體に及んで(或はその前の段階から?)雄の鋏角第1節先端内角及び第2節基部内側よりに瘤状隆起を生じ,又雌雄ともに上記5縦列の棘の數は略成髄にみる4角形小突起の數に一致す。第2節前面の毛は幼形の時よりあれど生長と共にその數と大きさを増す。鋏をなす部の先端の鋸齒は生長と共に數を増す(第1圖. L4第3圏, 8, 9)。
H. 觸肢先端2節には,はじめ鼓鞭状毛あり。生長とともにその間に毛を交へること多くなり、最後の脱皮に於いてこの鼓鞭状毛を全部失ふ。この事實はIscnyropsalidneが終生かかる鼓鞭状を觸肢に有するNemastomatidaeへの系統的接近を物語るものであると考へることを可能ならしめるであらう。觸肢先端には爪なし。
I. 歩脚基節の毛も幼形にては1, 2本なれども生長とともにその數を増す。成體に見る腿節,〓節或は脛節の白色環帯は亞成體以下には見ることなし。附節先端には各爪あり。
J. 成體腹部背甲の小キチン板には左右2小キチン板に分れる畸形のもの比較的多し。

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