2022 年 2 巻 2 号 論文ID: SC-2022-10
本研究では,主に日本語母語話者が第二言語の聴取において,フォルマント遷移のある音声で独立 発話よりも重子音発話として知覚する傾向を検証するため,イタリア語母語話者による単子音・重子音・独立発話 (例:macata, maccata, ma cata)を加工してフォルマント遷移の有無と子音長を変化させた音声刺激を用いて,どの発 話に聞こえるか三肢強制選択させる聴取実験を行った.その結果,学習経験にかかわらず日本語母語話者は 200 ms 以上の閉鎖区間長がある場合,フォルマント遷移のある音声のほうがない音声よりも重子音発話として聴取しやす く,独立発話として聴取しづらかった.また,学習経験があることでフォルマント遷移の有無による影響が強くな った.日本語母語話者は,母語と同様にイタリア語でも閉鎖区間長だけでなくフォルマント遷移を重子音の知覚に 利用している可能性がある.