AUDIOLOGY JAPAN
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原著
Auditory neuropathy spectrum disorderの乳幼児例におけるASSR閾値
泰地 秀信守本 倫子松永 達雄
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2010 年 53 巻 1 号 p. 76-83

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抄録

Auditory neuropathyは2008年の国際会議からANSDと呼称されており, 今回はその定義に従って診断されたANSDの乳幼児9例について検討した。後にABRが正常化していくようなみかけ上の難聴例 (auditory immaturity) は除外した。経過をみていくうちにDPOAEが消失した5例はANSDとみなした。ASSRの閾値にはかなり大きなばらつきがあり, ANSDの病態が多彩であることが推定された。良聴耳のASSR閾値とCOR閾値を比較したところ, 500~4000Hzでは有意な相関が認められた。ANSDの場合も補聴器装用効果をASSRでとらえることができ, 推測された利得は平均でみてCORとの差は10dB以下であった。3例はASSRの3分法平均の閾値が70dBHL未満で, その場合CORの平均閾値も88dBHL以下と他症例より良好であったが, これらはすべて基礎疾患を伴っていた。ASSRおよびCOR閾値が100dBHL以上の重度難聴の例のうち2例にOTOF遺伝子変異が認められた。ASSRはANSDで行動聴力検査が不確実な場合に聴力および補聴器装用効果を評価する方法になりうるものと考えられた。

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© 2010 日本聴覚医学会
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