AUDIOLOGY JAPAN
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第54回日本聴覚医学会主題演題特集号
「両耳補聴」 「特発性両側性感音難聴」
両側前庭水管拡大症の確実例とボーダーライン例のSLC26A4遺伝子変異および臨床所見の特徴
岡本 康秀松永 達雄泰地 秀信守本 倫子坂田 英明安達 のどか貫野 彩子山口 聡子仲野 敦子高木 明加我 君孝小川 郁
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2010 年 53 巻 2 号 p. 164-170

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抄録

前庭水管拡大症 (EVA: enlargement of the vestibular aqueduct) は最も頻度の高い内耳奇形である。EVAが認められる疾患としては, 先天性で発症し進行する難聴やめまいを呈し, ヨード有機化障害による甲状腺腫を伴うPendred症候群が知られている。またPendred症候群以外の症候群性難聴や非症候性難聴で認められる場合もある。Pendred症候群の原因としてはSLC26A4 遺伝子変異が報告されている。これまで画像検査による前庭水管拡大の程度とPendred症候群に関連する臨床的特徴についての関係はまだ確立されていない。今回我々は両側性難聴を, 画像検査による前庭水管拡大の程度から確実例とボーダーライン例とに分類し, SLC26A4 遺伝子変異を含むPendred症候群に関連する検査所見を比較検討した。拡大確実例群において遺伝子変異が89%で認められ, ボーダーライン例群では33%であった。Mondini奇形は確実例群で67%に認めたが, ボーダーライン例群では33%であった。めまい症状は確実例群で33%に認め, ボーダーライン例の17%であった。甲状腺腫は確実例群で22%に認め, ボーダーライン群で17%であった。甲状腺機能低下は確実例群の成人例で1例を認めるのみであった。サイログロブリン (TG) の上昇は, 両群ともに検査症例中約50%に認め, その全例にSLC26A4 遺伝子変異が認められた。以上の結果は前庭水管拡大の確実例群とボーダーライン群では, 確実例群に遺伝子変異と強い相関を認め症例の病態の構成が異なることが予想されたが, 臨床症状には明らかな有意な差は認められなかった。

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© 2010 日本聴覚医学会
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