AUDIOLOGY JAPAN
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原著
TCI使用後に補聴器によるTRTを追加施行した症例の検討
伊藤 まり相馬 啓子池上 奈歩佐藤 永通子
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2010 年 53 巻 4 号 p. 274-279

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抄録

TRT (Tinnitus Retraininng Therapy) はカウンセリングと音治療からなる耳鳴順応療法である。本来, 中等度~高度難聴症例はTCIのノイズを聴取し得ない傾向があり, 補聴器等他の音響によるTRTが勧められている。今回, 平成16年4月から平成21年3月までの5年間に当院耳鳴難聴外来を受診しTRTを試みた耳鳴患者183例 (男102人女81人) の内, 脱落例を除きTCI治療器を購入して治療を継続し得た99例 (男54人女45人) 中, 著明な改善感が得られず, 患側に補聴器を用いたTRTを追加施行した6例 (男1人女5人) を対象とし, 治療効果について検討した。中等度以上の難聴の耳鳴症例はTRTの音響療法として補聴器の対象になりうるが, 一側性感音難聴症例の場合, 健側聴力が保たれているので患者が補聴器装用を受け入れにくく, TCIを先に試行する方が抵抗感がない。当科の統計では一側性中等度~高度難聴の症例で先にTCIによるTRTを施行し, 補聴器によるTRTを追加施行したところ耳鳴の自覚的苦痛度が有意に改善した。以上, 一側性中等度~高度難聴症例においてはTCIによるTRTを施行後, 補聴器によるTRTを追加施行することも耳鳴治療として有効であると考えられた。

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© 2010 日本聴覚医学会
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