AUDIOLOGY JAPAN
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原著
筑波大学における聴覚障害医学生への教育と情報保障 第2報
~卒業から臨床研修へ~
和田 哲郎中山 雅博廣瀬 由紀西村 文吾田中 秀峰上前泊 功田渕 経司大久保 英樹原 晃
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2014 年 57 巻 4 号 p. 230-235

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抄録

要旨: 平成13年の医師法の一部改正により聴覚障害者が医師になる道が開かれた。しかし, 聴覚障害医学生あるいは医師を受け入れるための支援制度は確立されておらず, 受け入れ大学あるいは病院が試行錯誤で情報保障に腐心している。我々は, 上記の医師法改正後, 全国で3人目となる聴覚障害医学生を受け入れ, 教育し, 当該学生は医師国家試験に合格し, 臨床研修を開始した。卒業から臨床研修開始に至るこの時期の3つの課題, ①卒業に向けての学習指導, ②医師国家試験, ③臨床研修のそれぞれについて, retrospective に検討した。
 ①学習指導では, 情報保障の準備を整えたが結果的にはパソコン要約筆記をほとんど利用しなかった。支援体制は整えつつ, 本人の希望に柔軟に対応することが望ましいと考えられた。②国家試験では所定の手続きを行うことで適切な対応が受けられ, 試験に不利になることはなかった。但し, 終了合図が聞こえずに鉛筆をおかなかった時, 不正と誤解されることがないようにあらかじめ申請書に記入しておけばより安心して受験できると考えられた。③外来受付で聴覚障害医師が担当することを説明したところ, 新規受診患者70名中2名が同意しなかった。対策として院内掲示等でもっと情報をオープンにすることとした。また, 筆談では診察時間が長くかかることから, 病院として手話通訳者を採用することとなった。
 国家試験に合格し医師になることがゴールではない。その後, 聴覚障害医師が本人の力を十分発揮できるバリアフリーの社会を実現していくために, このような経験を蓄積し, 共有する, 卒前卒後につながる連携が大切と考えられた。

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© 2014 日本聴覚医学会
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