2018 年 61 巻 2 号 p. 154-159
要旨: 亜鉛欠乏による症状として耳鳴, 難聴, 抑うつ等が報告されているが, この3つを同時に検討した文献は渉猟しえた限りはなかった。 そのため, 一般地域在住中高年者1,429名において, ベースライン時の亜鉛欠乏の有無が, 4年後の耳鳴, 耳鳴による不快, 難聴, 抑うつに関連するかどうかの検討を行った。 ベースラインにおいては亜鉛欠乏の有無によって耳鳴, 難聴, 抑うつの頻度の有意差を認めなかった。 4年後の耳鳴, 耳鳴による不快, 難聴, 抑うつのそれぞれを目的変数としたロジスティック解析では, 亜鉛欠乏と有意な関連を認めたのは抑うつのみであり, ベースラインの抑うつの有無等を調整したオッズ比は1.66 (p=0.025) であった。亜鉛欠乏は抑うつとの関連が強く, 耳鳴・難聴患者において抑うつを伴う場合には亜鉛欠乏にも留意する必要があると考えられた。