AUDIOLOGY JAPAN
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総説
聴覚臨床に役立つ聴覚メカニズムの知識
―音受容から聴覚情景分析まで―
川瀬 哲明
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2018 年 61 巻 3 号 p. 177-186

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抄録

要旨: 聴覚系は音情報の処理システムである。難聴を訴えて受診する患者の診察では, 聴覚系の各パーツの病理を分析的に考えるとともに, それらの病理が聴覚系全体へ与える影響を統合的に考慮する, 局所と全体の視点からの理解が重要となる。本稿では, 聴覚系の代表的パーツ (外有毛細胞, 内有毛細胞―蝸牛神経シナプス, 中枢聴覚情報処理機構) の病理に起因する聴覚障害について概説した。1) 外有毛細胞障害では, 典型的な「内耳障害」の像 (補充現象を伴う閾値上昇) を呈すること, 2) Auditory Neuropathy とHidden Hearing Loss は, いずれも内有毛細胞―蝸牛神経シナプスの病理が一因となっているが, 前者では神経スパイク情報の同期障害 (質的障害) が, 後者では閾値が高いニューロンの量的障害が中心病態として推察されること, 3) 聴覚情景分析メカニズムの障害は, 聴覚情報処理障害の一因となりえること, などを紹介した。

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© 2018 日本聴覚医学会
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