AUDIOLOGY JAPAN
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原著
耳鳴患者に認められる聴覚過敏に関する検討
高梨 芳崇川瀬 哲明佐藤 剛史香取 幸夫
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2018 年 61 巻 3 号 p. 203-208

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抄録

要旨: 本邦の耳鳴診療において TRT (Tinnitus Retraining Therapy) は治療の first line となっているが, 音響療法に取り組むうえで, 音への不快感を訴える患者への対応に苦慮することがある。当科では, 耳鳴外来を受診する耳鳴患者には, あらかじめ, HQ (Hyperacusis Questionnaire) 並びに不快レベル (UCL: Unconfortable level) による評価を行い, 診療に役立てているが, 今回, 従来の問診票による評価 (THI: Tinnitus Handicap Inventry, HADS: Hospital Anxiety Depression Scale) との関連について検討を行った。対象は2015年1月から2016年12月まで当科外来を受診した耳鳴を主訴とする患者のうち, THI, HADS, HQ による問診票評価, 並びに不快レベルを測定していた131例 (男性67例, 女性64例, 平均年齢63.98歳) で, 診療録をもとに後向きに検討した。その結果, THI と HADS の A スコア, 並びに HQ の3者間には, いずれも強い正の相関が認められ (THI: HADS (A score) r=0.626, p<0.05, THI: HQ, r=0.649, p<0.05, HADS (A score): HQ, r=0.506, p<0.05), HQ と HADS の D スコアにも, やや弱い正の相関が認められた (r=0.322, p<0.05)。しかし, 問診票のスコア (THI, HQ) と, 不快レベル, dynamic range には, 有意な相関を認めなかった。本検討からは UCL を用いて耳鳴や聴覚過敏の苦痛度を推定することは難しい事が示唆されたが, 耳鳴の重症化の機序と聴覚過敏の重症化の機序には何らかの関連があることが示唆された。

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© 2018 日本聴覚医学会
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