2018 年 61 巻 3 号 p. 216-221
要旨: 他機関にて補聴器を購入も装用効果に不満を持ち, 改善目的に当科外来を受診する患者は少なくない。このような症例233例を後ろ向きに検討することで, その臨床像を把握するとともに, 必要となった対処とその結果について検討を行った。233例のうち1例を除いた232例 (99.6%) の持参補聴器が適合不十分であった。その原因は, 器種選択の誤りが129例 (55%), 調整の不適85例 (37%), 故障18例 (8%) であった。適合不十分例に対し, その原因に応じて当科補聴器の貸出や調整などの対処を施行した。その結果, 器種選択の誤りによる適合不十分例のうち持参補聴器の使用継続を選択した28例を除いた204例 (88%) が適合となった。この現状の背景には一部機関にて不適切な器種販売や調整が行われていた可能性がある。今回の検討より, 医療機関にて他機関における補聴器適合不十分例に対し再フィッティングを行うためには検査装置やフィッティングソフト, 言語聴覚士などの医療資源が必要であることが示唆された。