2020 年 63 巻 1 号 p. 62-68
要旨: 残存聴力活用型人工内耳 (EAS) の装用時間が延び悩む一症例において, イヤモールド加工による影響を検討した。加工無しイヤモールド (「加工無し」), 平行ベント, Y ベントの3種を用いて音場閾値検査, 音場語音弁別検査, 音響刺激出力特性測定, 聴こえ・装用に関するアンケートを施行した。3種のイヤモールド併用開始時に, 音場閾値・語音弁別検査で成績が良好であったのは「加工無し」で, 患者自身が良好と選択したのは Y ベントであった。しかし, 3種類のイヤモールド使用3ヶ月後・6ヶ月後に患者は「加工無し」を選択し, 装用時間も以前より延びた。装用時間が延び悩んだ要因として装用開始当初のイヤモールドの密閉感が推測された。不快なく終日装用を目指すためには「加工無し」とベント加工を同時に比較することで, 症例自身が各々のイヤモールドの利点欠点を知る過程が心地よく装用する工夫になることを経験した。