AUDIOLOGY JAPAN
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総説
難聴と認知症に関する臨床研究:補聴器を用いた認知症予防への展望
佐治 直樹
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2021 年 64 巻 1 号 p. 45-53

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抄録

要旨: 本邦は高齢化社会を迎え, 認知症対策が喫緊の課題である。軽度認知障害 (認知症になる前段階) における, より早期での生活改善も認知症予防の視点から提唱されている。改善可能な認知症の危険因子のうち, 難聴は最も重要である。しかし, 補聴器の導入による認知症の予防効果は未解明な部分も多い。筆者らも, 耳鼻咽喉科ともの忘れ外来との協業で臨床研究を実施している。また, プレリミナリー研究の結果から, 難聴は認知症に伴う行動・心理症状の独立した関連因子であり, 難聴群ではもの忘れの自覚や不安感, 焦燥を感じる割合が多く, 抑うつ傾向であったことなどを見いだした。さらに, 地域在住高齢者の住民健診データを収集し多変量解析したところ, 難聴があると認知機能低下の合併が1.6倍多いことも判明した。補聴器導入が認知症の発症リスク軽減に寄与するのであれば, 今後は, 高齢者の聞こえや認知機能についてのチェックがさらに重要となるだろう。

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© 2021 日本聴覚医学会
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