2021 年 64 巻 6 号 p. 545-554
要旨: MMN や P300 などの事象関連電位は, 聴覚中枢の評価が可能であり聴覚情報処理障害への応用などが期待されているが, 検査手技が煩雑で検査時間も長く一般的な聴力検査室への普及は進んでいない。今回我々は測定の短時間化を目的に, 従来の MMN 測定で多く使われる Fz と ABR と同一の Cz で関電極位置が潜時に与える影響を正常聴力成人6耳に対して検討するとともに, 関電極位置を Cz にして49耳に対して MMN と P300 を測定し, 安定的な記録に必要な加算回数の検討を行った。その結果, 関電極位置による振幅・潜時の有意な違いは認めず, MMN・P300 ともに200回加算が100回加算・300回加算に対し可測率が最も高かった。200回加算での測定時間は, MMN・P300 検査とも両耳測定でともに約12分であった。関電極を Cz・加算回数を200回とすることで MMN および P300 を実用的な臨床検査とすることができると考える。