要旨: 内耳奇形例や蝸牛神経低形成例, 発達障害例を除き4歳未満に CI 手術を受けた先天性重度聴覚障害児50例の単音節聴取能について, 小学校就学期と学童期の発達変容について検討し, 以下の結果を得た。
1) 小児 CI 装用例における学童期の単音節聴取能は平均84%と良好な結果を示し, 小学校就学期に比し平均11.5ポイントと, 概ね改善を認めた。
2) 母音部正答率は, 学童期に平均99%に達し, 多くの例で100%に達した。
3) 音節別正答率では無声音は有声音に比し高く, 2時期に共通していた。とくに, 摩擦音と半母音は良好であり, 単独母音や他音節に比し良好であった。
4) 同一音素を有する音節群でも正答率, および学童期の改善に多様性を認めた。
5) 異聴先は/n/・/k/・/m/が多く, 同一構音様式内での誤りは通鼻音と破裂音に多く見られた。
6) 学童期の改善ポイントは, 就学期の VIQ 及び単音節聴取能と有意な負の相関を示した。就学期に言語能力に課題を示す児では,学童期の聴取能の改善を注視する必要がある。