2022 年 65 巻 3 号 p. 169-
要旨: 遺伝学的検査と診断は, 全ての医師にとって重要な医療行為になりつつある。難聴は耳鼻咽喉科領域で最も頻度の高い遺伝性疾患であり, 先天性難聴と若年発症型両側性感音難聴の遺伝学的検査は保険診療で可能である。従って, 遺伝性難聴の知識とその存在を念頭においた診療が不可欠である。先天性難聴の半数以上は遺伝性難聴であり, 非症候群性遺伝性難聴においては最も頻度の高い GJB2 遺伝子を含む120以上の原因遺伝子が報告されている。遺伝学的な原因を知ることは, 難聴/遺伝カウンセリングとともに人工内耳の予後推定などに有用である。若年発症型両側性感音難聴は指定難病であり, 診断に遺伝学的検査が必須である。原因遺伝子は ACTG1, CDH23, COCH KCNQ4, TECTA, TMPRSS3, WFS1 遺伝子の7遺伝子であるが, 近日中に EYA4, MYO6, MYO15A, POU4F3 遺伝子が追加される予定である。