AUDIOLOGY JAPAN
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65 巻, 3 号
June
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 野口 佳裕
    2022 年 65 巻 3 号 p. 169-
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    要旨: 遺伝学的検査と診断は, 全ての医師にとって重要な医療行為になりつつある。難聴は耳鼻咽喉科領域で最も頻度の高い遺伝性疾患であり, 先天性難聴と若年発症型両側性感音難聴の遺伝学的検査は保険診療で可能である。従って, 遺伝性難聴の知識とその存在を念頭においた診療が不可欠である。先天性難聴の半数以上は遺伝性難聴であり, 非症候群性遺伝性難聴においては最も頻度の高い GJB2 遺伝子を含む120以上の原因遺伝子が報告されている。遺伝学的な原因を知ることは, 難聴/遺伝カウンセリングとともに人工内耳の予後推定などに有用である。若年発症型両側性感音難聴は指定難病であり, 診断に遺伝学的検査が必須である。原因遺伝子は ACTG1, CDH23, COCH KCNQ4, TECTA, TMPRSS3, WFS1 遺伝子の7遺伝子であるが, 近日中に EYA4, MYO6, MYO15A, POU4F3 遺伝子が追加される予定である。

原著
  • 久保 愛恵, 田原 敬, 勝二 博亮, 原島 恒夫
    2022 年 65 巻 3 号 p. 177-
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    要旨: 本研究では, 定型発達幼児を対象に, 雑音下数字聴取課題と聴覚的注意機能計測課題 (ACPT-P) を実施した。3歳6カ月から6歳5カ月までの, 聴力に問題のない幼稚園児47名が参加した。雑音下数字聴取課題は幼稚園の自由遊び場面を記録したクラスルームノイズを使用し, SN 比2条件 (0dB, -6dB) ×呈示タイミング2条件 (一定, ランダム) の計4条件で実施した。その結果, 年齢が高くなるほど, また SN 比が上昇するほど, 雑音下での数字聴取成績が高かった。呈示タイミングによる正答数の差は認められなかった。数字を回答させるクローズドセットな条件としたため, 答えの推測がしやすくなったことが影響していると考えられた。雑音下数字聴取課題の正答数と ACPT-P の反応時間との関係をみてみると, 最も難しいランダム試行 SN 比-6dB 条件にのみ有意な負の相関が確認され, より聴取しにくい状況下では聴覚的注意機能が雑音下聴取能力に影響を及ぼす要因となる可能性が示唆された。

  • 奥沢 忍, 廣田 栄子
    2022 年 65 巻 3 号 p. 185-
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    要旨: 聴覚障害のある教員 (聴覚障害教員) の職業生活と課題に関する質問紙調査結果を用い, 内容妥当性, 構成概念妥当性, 内的整合性など信頼性を確認して, 評価尺度 (40項目) を作成した。本尺度の項目は内容から, 国際生活機能分類 (ICF, WHO) における参加制約, 対応行動, 精神衛生の水準に対応すると解釈された。聴覚障害教員における参加制約は, 聴覚情報の制約, 他職員の障害理解, 保護者や児童生徒との関係, 障害による不安と懸念などの因子で規定されていた。とくに, 聴児を担当する教員や中等度難聴を有する教員において, 聞こえる児童等との関係形成に制約が生じ, 不安・懸念が大きい傾向が示された。課題の解決には, 教育職の意義の自覚に基づいた対応行動形成が重要であると指摘した。本尺度を用いて, 聴覚障害教員の職業生活と課題について個別に検討することで, 教育現場での参加制約の改善を図ることが有用と示唆された。

  • 岡田 慎一, 新井 峻, 小室 久美子
    2022 年 65 巻 3 号 p. 194-
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    要旨: 新生児聴覚スクリーニング後の初回の精密検査 (実施月齢平均3.8±1.9カ月) で一側性難聴の結果であった65例を対象に, 3歳以降の正常側の聴力レベルを調べた。3歳以降まで管理のための受診が継続していたのは42例 (65%) であり, 9例 (14%) は一側性難聴のまま受診が途絶え, 14例 (22%) は1歳未満に検査結果が両側正常化して聴力管理を終了していた。3歳以降まで継続管理された42例の初回精密検査正常側の平均聴力レベル (調査時月齢63.6±15.7カ月) は38例 (90%) が25dB 未満の正常聴力であった。4例 (10%) が難聴の結果で, 中等度難聴以上に悪化した3例に補聴器装用を行った。正常側の聴力が悪化し, 児の状態が両側性難聴に変化していても保護者が気付かない例があり, 一側性難聴児における乳幼児期の聴力管理の重要性が改めて認識された。

  • 蒲谷 嘉代子, 高橋 真理子, 山川 真衣子, 岩﨑 真一
    2022 年 65 巻 3 号 p. 201-
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    要旨: 耳鳴と頭痛が併存する症例に遭遇することは少なくない。今回, 当院耳鼻咽喉科耳鳴外来を受診した耳鳴初診患者を対象とし, 頭痛の併存頻度, 耳鳴と頭痛が連動する症例の頻度, さらに, 頭痛の有無と耳鳴の重症度の関係について検討した。重症度については, 耳鳴による支障度を THI (Tinnitus handicap inventory), うつ・不安を HADS (Hospital anxiety and depression scale) にて評価した。

     耳鳴126例のうち, 頭痛併存例を38例 (30.2%) 認めた。そのうち, 耳鳴と頭痛が連動する症例は16例 (42.1%) であった。頭痛の有無で2群に分け比較したところ, THI, HADS に有意差は認めなかった。しかしながら, 耳鳴と頭痛が連動する症例と, それ以外の症例を比較すると, 前者にて有意に THI, HADS が高得点であった。

     耳鳴患者に頭痛が併存することは少なくなく, 中でも耳鳴と頭痛が連動する症例では耳鳴の重症度が高く, うつ状態を有する傾向を認めた。耳鳴患者の診療においては, 頭痛の併存を確認することは有用と考えられた。

  • 鴨頭 輝, 樫尾 明憲, 西村 信一, 山岨 達也
    2022 年 65 巻 3 号 p. 209-
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2022/07/15
    ジャーナル フリー

    要旨: 日本音響学会の新聞記事読み上げ音声コーパスの中の株式会社エイ・ティ・アール自動翻訳電話研究所によって作成された ATR 音素バランス文に基づく音声コーパスから 5・6・7 文節の文を抽出し, 単独話者による読み上げ音声を使用して, 認知機能に異常の無い60歳以上の整形外科入院患者34名を対象として, 一日に10文, 10日間の聞き取り課題を施行した。書き取りデータをテキストデータ化した後, 文節正解率・音節正解率・音素正解率・母音正解率・子音正解率を自動採点した。文節数の判定及び自動採点には, Python, CaboCha, MeCab, KyTea, KAKASI に基づいたプログラムを使用した。100文合計の文節正解率・音節正解率・音素正解率・母音正解率・子音正解率はそれぞれ0.66±0.22, 0.78±0.17, 0.81±0.14, 0.81±0.14, 0.81±0.14であった。本システムは今後発表される新たな音声コーパスに基づいた聞き取り検査の開発・評価にも有用であると考えられる。

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