抄録
ABRの位相スペクトル解析を診断学的に応用するため解析の諸条件の変化とCSM値の関係, 及びABR波形と位相スペクトルの関係について基礎的検討を行い, 次のような結果を得た。 (1) 無刺激下CSM値は周波数分析能や加算回数の変化によって変わらない。 (2) 各反応周波数成分のCSM値は周波数分析能24.4-97.7Hzの範囲では, 分析能が粗くなるほど高値となり, 分析能が細かくなるほど低値となる。 (3) 各反応周波数成分のCSM値は加算回数が多くなるほど高値となる。 (4) 以上よりABRの位相スペクトル解析を診断学的に応用する場合, 周波数分析能は97.7Hz, group averageの加算回数は200回が適当である。 (5) 位相スペクトルA成分 (0-400Hz) はABR緩徐波成分と, C成分 (800-1200Hz) は速波成分と関係が深い。 B成分 (400-800Hz) は単独で正常値を示すことは少なく, 速波, 緩徐波双方の形成に関与している。