1994 年 37 巻 3 号 p. 177-182
伸長増幅は入力音圧レベルの増大に伴い, 一定の比率にしたがって増幅度が大きくなる新しい増幅法である。 伸長増幅はSN比を改善するのに有用であるが, 伸長増幅を作用させることは, 同時に語音も変化させる。 デジタル補聴器HD-10を用い, 6名の正常者を対象に, 語音明瞭度における伸長増幅の効果を検討した。 SN比10dBの条件下で語音明瞭度検査を施行した。 全周波数帯域に1:2の伸長比で伸長増幅を作用させた場合には, 語音明瞭度は低下しなかった。 しかし1:4, 1:8の伸長比では伸長増幅を作用させなかったときと比べて著明に明瞭度が低下した。 一方, 伸長増幅を低および高周波数帯域にのみ作用させたときには, すべての伸長比において語音明瞭度は低下しなかった。 低および高周波数帯域のみに伸長増幅を作用させた場合には, 語音明瞭度を低下させずに雑音を軽減する効果がある。