1994 年 37 巻 3 号 p. 236-246
内耳道内聴神経腫瘍2症例の聴力障害を蝸電図および誘発耳音響放射 (以下EOAEと略す) にて評価, 検討したので報告する。
蝸電図検査は鼓室内誘導法にて行い, EOAEの測定では1kHzから2kHzまでの周波数帯で最も明瞭に反応が認められた周波数を仮にbest frequency (以下BFと略す) と呼称し, BFの検出閾値を求めた。
症例1は46歳, 女性で, 左耳の内耳道内聴神経腫瘍である。 聴覚心理学的検査は内耳障害を示唆するものであった。 蝸電図およびEOAEからは, 主にラセン神経節から蝸牛神経の障害による難聴が示唆されたが, 軽度の有毛細胞領域障害も併存していた。
症例2は36歳, 女性で, 左耳の内耳道内聴神経腫瘍である。 経過中に聴力変動 (回復) が観察された。 蝸電図およびEOAEからは, 有毛細胞領域の障害, およびラセン神経節から蝸牛神経の障害の併存が示唆された。