1998 年 41 巻 6 号 p. 731-739
臨床的に古典型Pelizaeus-Merzbacher病と考えられる男児9症例の聴覚認知および言語発達の評価・指導を行った。乳児期に発症した先天性眼振, 頭部・体幹・上肢の振戦, 下肢の痙性麻痺の進行が認められた。MRIを実施した7例全例のT2強調画像で白質全体に高信号を認め, ABRでII波またはIII波以降の消失が認められたことから, 大脳・脳幹白質の髄鞘形成不全が示唆された。聴力検査では正常または軽度閾値上昇が7例, 中~高度閾値上昇を示したものが2例であった。2例とも経時的に聴覚閾値の改善が認められた。言語理解は, 9例とも日常会話の理解は良好で, 実用的な聴覚認知には問題がないと考えられた。言語表出は, 8例に重度の運動障害性構音障害, 1例に失調性構音障害が認められた。聴覚理解が比較的良好であるのに比べ, 表出に著しい障害がみられ, 音声言語以外のコミュニケーション手段の獲得が重要と考えられた。