AUDIOLOGY JAPAN
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人工内耳幼児症例の聴覚による言語獲得
術前に獲得された視覚的手段の役割
野中 信之川野 通夫森 望中島 誠越智 啓子渡邊 文美
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2000 年 43 巻 1 号 p. 44-53

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抄録

症例は4歳で人工内耳埋め込み術を受けた先天性重度難聴1例である。 術前はことばの理解は読話や手話, 指文字を補助とし, 表現は手話を多用していた。 本症例が人工内耳装用により聴覚で言語を理解し, 話しことばを用いる過程をビデオで観察した。
症例は音入れ後, 人工内耳による言語音の意味を, 術前に使用していた読話などの視覚的手段を併用して確認した。 そして一度意味を確認すると, 以後簡単なことばは聴覚だけで理解した。 また本症例は術前後を通じて手話などを補助に多語表現を発達させていた。 そして聴覚や読話で理解する言語の増加に伴い, 手話は減少し, 音声言語での会話が増えた。 この様に術前に獲得された視覚的手段を術後も音声言語と併用することは, 本症例が聴覚で言語を獲得するためには有効であった。

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© 日本聴覚医学会
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