2003 年 46 巻 3 号 p. 167-174
胎生期のサイトメガロウイルス感染による聾・軽度発達障害・肢体不自由等を有した先天性重複障害児に, 7歳7ヵ月で左耳に人工内耳を装用させた。 4歳5ヵ月時より術前まで補聴器装用による音声言語獲得訓練を施行し, 術後も10歳5ヵ月まで同様の指導を継続した結果, 次のことが明らかとなった。
1) 語音聴取能力の改善・安定した母子関係の構築・音声言語で日常生活に必要な会話をするといった点では, 著明な効果があった。
2) 構音や語彙力・知能や読書力の獲得といった点では問題が残り, その予防には6歳頃までの言語指導が重要と考えられた。
3) 先天性重複障害聾児に対する人工内耳装用の効果と限界が示唆された。