AUDIOLOGY JAPAN
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ムンプス難聴
井上 泰宏
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2008 年 51 巻 6 号 p. 617-623

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抄録

ムンプス難聴は, ムンプスウイルスの感染によって生じる急性感音難聴である。一般に, 一側性の高度難聴 (聾) を発症するとされているが, 両側性に生じることもあり, また, 軽度から中等度の難聴症例も存在する。従来, その発症頻度はムンプス20000例に1例とされてきたが, 最近では, より高い発症頻度を示す報告が多い。一方, 旧厚生省研究班の診断基準では, ムンプスの不顕性感染による難聴も, その範疇に含めている。難聴に対しては, 副腎皮質ステロイドなどによる突発性難聴に準じた治療が行われるが, ほとんどの症例で無効である。そのため, 両側の高度難聴症例に対しては, 人工内耳による補聴も行われている。ムンプスの発症はワクチン接種により抑制できるが, MMRワクチンの副作用の問題により, 現在, 我が国の接種率は30%前後となっているため, 今後もムンプスの流行により, ムンプス難聴が一定の割合で発症していくことが予想される。

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