2014 年 30 巻 p. 49-57
2000年代後半より,日本の上場企業がメザニン・ファンドによる資金調達を行うケースが登場した。メザニン・ファイナンス(mezzanine finance)は,デッド・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの中間に位置付けられる資金調達方法であり,優先株式,劣後社債,劣後ローンなどを指す。本論文では,日本で上場企業がメザニン・ファンドより資金調達を行ったケースの一つであるウエストホールディングスの事例を取り上げ,案件の背景(資金調達前の財務状況や業績),優先株式の概要,資金調達後の財務状況の変化と経営改善,メザニン・ファンドによる投資の回収の状況について明らかにした。ウエストホールディングスの優先株式には普通株式への転換請求権が付与されていたが,経営改善が順調に進捗したためその権利が行使されることはなく,結果として普通株式が希薄化されることもなかったことから,メザニン・ファイナンスの成功事例であると位置付けられる。