データ分析の理論と応用
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Print ISSN : 2186-4195
論文
回顧:数量化理論とグラフ
西里 静彦
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2019 年 8 巻 1 号 p. 47-57

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抄録

半世紀にわたる数量化理論の仕事で,取り残した一つの課題がある.それは1989 年にGreenacre の強烈な批判で失墜したCGS スケーリングを擁護する論文を書くという今は亡きCarroll への約束である.それは,分割表の数量化で得られる行と列の最適変量を,いかに同一空間に表現するかというグラフ法の問題である.行と列の変量は行と列の相関が1 でない限り同一空間にない.それにも拘らず,すべての場合に行と列を同一空間にプロットするという方法が,半世紀の間に定着化してしまった.その打開策として提起されたCGS スケーリングは握りつぶされ,そのあとCGS スケーリング正当化の論文を出すことは困難を極めた.本文は現在数量化理論の砦としてかまえる同時グラフ法の強固な壁を乗り越え,正当な同時グラフには2 倍の空間が必要であることを示した.残念ながら,CGS スケーリングは2 倍の空間を考慮しなかったためにGreenacre の批判に屈した.本論文の空間2 倍説に対し読者の理解が得られ,現在広く使われている対称グラフ法(フレンチプロット)と非対称グラフ法を批判の目で見直してくれれば何よりである.

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© 2019 日本分類学会
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