抄録
カニ類幼生の研究では、1940年代以前は幼生飼育が難しかったので、卵から孵化させた第1ゾエアおよびプランクトン採集により得られたものがほとんどであった.だが近年、クルマエビ等水産養殖技術の向上に伴い甲殻+脚類の幼生飼育が各国で盛んにおこなわれるようになってきた。カニ類でも第1ゾエアからメガロバ(第1ポストラーバ)を経て稚ガニまでの脱皮成長に伴う連続した形態変化の追跡が可能となった。その結果、カニ類の幼生に関する多くの資料が集まってきた。しかし各種幼生の詳細な報告は多いが、残念なことにカニ類の系統分類に関した報告、又は総説的な記載は少ない。そこで今回はカニ類の幼生の基礎的な見方を紹介し、さらに筆者の考え方を加えてカニ類の幼生に関するいくつかの問題点について論述したい。 稿を進めるに先立ち甲殻類幼生の相区分についての基本的な考え方をお教えいただいた九州大学名誉教授、三宅貞祥先生に感謝いたします。