BINOS
Online ISSN : 2188-4692
Print ISSN : 1345-1227
ISSN-L : 1345-1227
論文
横浜自然観察の森での21年にわたる鳥相多様性の変化
藤田 剛柴田 英美古南 幸弘藤田 薫
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 22 巻 p. 1-11

詳細
抄録

横浜自然観察の森(観察の森)で進められてきた生息地管理や来訪者などが鳥類におよぼす影響を明らかにする第一段階として、観察の森が開園した1986年から継続して行われてきたラインセンサス法による調査のデ-タを、開園の1986年から2006年までの約20年間に注目し、解析を行った。具体的には、鳥類の記録種数の経年変化を、繁殖期(4-6月)と越冬期(1-2月)の2つの時期のデ-タを使い、調査コースの巡回方向や調査員のちがいなど、いわゆる観察誤差の影響もコントロ-ルした上で推定した。解析には、一般化線形混合モデルを用いた。記録された種は合計で40科95種、その内、繁殖の可能性が高くかつ神奈川県レッドデ-タブックで準絶滅危惧以上のランクに含まれる種が7種、大面積の森林を主な生息地とする種も7種含まれていた。季節移動の様式別に見ると、留鳥で繁殖の可能性が高い鳥が27種、同じく夏鳥が7種、冬鳥が28種記録されていた。解析の結果、約20年のあいだに、とくに繁殖期の種数が増加していたことが分かった。また、調査コースの巡回方向が坂を登る場合に、記録種数が大幅に増加することがわかった。これらの結果から、以下の2つの結論が導かれた。1)観察の森での保全活動によって、とくに繁殖期の鳥の多様性が高まっている可能性がある。2)調査方法、とくに調査コース巡回の方向が記録種数に強く影響するため、これを無視すると、種数の増減を誤って解釈する可能性がある。長期モニタリングの場合、途中で巡回方向などを変えない方が望ましい。

著者関連情報
© 2015 日本野鳥の会 神奈川支部
次の記事
feedback
Top