BINOS
Online ISSN : 2188-4692
Print ISSN : 1345-1227
ISSN-L : 1345-1227
論文
石川県輪島市で保護されたアオバトの体重の推移と換羽との関係(2011年~2014年)
こまたん畑中 優美
著者情報
キーワード: アオバト, 換羽, 体重
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 22 巻 p. 13-23

詳細
抄録

石川県輪島市で2005年9月18日に保護された保護アオバトの2010年8月~2015年4月までの体重の推移と2011年~2013年までの抜け落ちた羽の調査から次のことが明らかになった。

1)体重の推移では、1年の周期の中で体重増加期(1月頃~5月頃)と体重減少期(6月頃~12月頃)がありそれが毎年繰り返された。前月よりの体重増加量の最大月は5月で+7g/月と体重増加期初期の2月(+3.3g/月)より倍増している。

2)冬季に過ごす気温が20℃を超える場合にはその後の体重増加期の期間が長くなり体重増加も大きくなった。

3)2011年~2014年までの各年度別体重の範囲は年間平均体重範囲:243g~255g(幅:12g)最大値範囲:251g~269g(幅:18g)最小値範囲:231g~245g (幅:14g)全期間体重推移の範囲:最小231g(2012年1月)~最大269g(2013年9月)(幅:38g)の範囲であった。

4)2年間(2011年・2012年)の年間平均体重244.4gに対して、最大26.5gの幅で増減した。これは10%を越える割合である。

5)全身換羽枚数の累計(全身1年間1月~12月累計)2011年:3491枚2012年:3619枚2013年:3252枚同じ要領で収集した前回調査、こまたん・畑中(2009)と全身換羽枚数の累計は前回値とほとんど同じであった。

6)全身換羽重量の累計(全身1年間1月~12月累計)2011年:25308mg2012年:23137mg2013年:23033mg

7)年ごとに体重の推移に大きな変動があっても換羽ピーク期のタイミング(P4・P8)は年ごとにそれほど大きな変化はなかった。しかし冬の低温期がないままに高い温度を保っていた場合にはその他の次列風切羽や体羽などの換羽が遅れたことから換羽の規則性に微妙な狂いが生じた可能性が考えられる。

8)換羽ピーク期になってもその前から始まっていた体重の減少率(1カ月当たりの体重減少量)が継続され、それ以上の特段な減少は見られなかった。一方、換羽ピーク期を終えてから2カ月程度後に再び増加に転じる。渡りに備えるための体重増加は、換羽ピーク期が終了してから2カ月程度の期間をおいてからおきると考える。

9)アオバトも日長時間と体重増加には相関があり、体重増加は1月(日長時間11時間5分)から日長時間が長くなるとともに体重も同様に増加して行き5月の日長時間15時間24分に体重のピークが来ている。

著者関連情報
© 2015 日本野鳥の会 神奈川支部
前の記事 次の記事
feedback
Top