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論文
関東平野に越冬する猛禽類は水辺とその周囲環境をどの程度利用しているのか
和田 のどか倉本 宣
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 23 巻 p. 27-35

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抄録

生態系の高次捕食者である猛禽類は様々な環境を選好するが、その中でも湿地は多くの種の生息地となることが知られている。大規模な面積の湿地と猛禽類との関係はいくつか研究されているが、都市近郊にある水辺と周囲の環境が猛禽類にとって重要なものなのかどうかは明らかにされていない。そこで本研究では関東平野にある水辺とそのまわりの比較的小さな自然環境に着目し、越冬期の猛禽類がどの程度利用しているのか調査することで、人間生活域の中にある自然環境の重要性を明らかにする。

調査地は関東平野内にある5 地点とした。2014 年と2015 年の10 月~3 月、8:00 ~16:00 の間で調査地ごとに20 時間ずつ調査した。猛禽類行動調査と環境調査を行い、QGIS とMAXENT モデルにて解析を行った。

MAXENT モデルの結果では猛禽類にとって水域と草地の入り組み度が大きな影響を及ぼしていた。これは水域と草地が入り組んでいるほど猛禽類のエサとなる動物が侵入しやすく、猛禽類の利用が増加するためと推察される。特にノスリとトビはネズミや小鳥を採餌するため草地の入り組み度の寄与率が高く、ミサゴは魚類を採餌するため水域の入り組み度の寄与率が高くなった。以上から水域面積がある程度あり、水域や草地の入り組み度が高い場所ほど越冬期の猛禽類の利用により良い影響を及ぼすことがわかった。

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© 2016 日本野鳥の会 神奈川支部
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